■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美と申します。
きょうは、3人の陳述人の皆さん、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。急な開催だったことと思いますけれども、お出ましをいただいたことに、そしてまた御意見をいただいたことに心から感謝を申し上げます。
そこで、私に与えられている時間も限られておりますので、早速質問に入っていきたいと思います。
まず、杵渕陳述人、教育論については、本当に大変すばらしいものを聞かせていただきました。
子供たちがいかに地域で育っていくべきか、御自身が地域の中で活動されているPTAの役員でいらっしゃったり、また地方議会の中で発言をされておられたり、また御自身が父親であられるという立場からの御発言だったと思いますけれども、政府案と民主党案、そして今の教育基本法の現行法、これらについてのそれぞれの評価をまずお聞かせいただきたいと思います。私たちも民主党案を提出しておりまして、今回の委員会の中では政府案と一緒に審議をしているんですけれども、いかがでしょうか。
■杵渕広意見陳述人(宇都宮市議会議員)
資料としては、前々から3案の比較表はもらっておりまして、時々勉強しておりまして、慌ててこれを送られて見たというのが現状です、正直な話を申しますと。
ただ、現行法と今度出ている2案につきましての相違というのが正直具体的にどこにあるんだろうというふうに、これをぱっと読んだ限りではそう思うわけです。文言の違い、表現の違いというものは確かにあります。しかし、求めているものがそんなに違いがあるのかなというふうに、これを読んだだけではそのようにしか感じられない、私は。
済みません、細かく最後まで読んで御答弁させていただければありがたいんですが、そこまで勉強している時間がございませんでしたので、このような感覚でございます。
■西村(智)委員
今、教育基本法の改正、国会で80時間ぐらい実は議論されておるんですけれども、まだ実は国民の皆さんの中で基本法を積極的に改正せよという意見というのは正直言って大きくないですね。読売新聞の世論調査の中でも、いろいろな各種マスコミなどでの世論調査で明らかになっておりますけれども、どちらかといえばやはり、教育は大事だ、しかし慎重審議を尽くしてほしい、そういう意見が大勢なわけでございます。
今回基本法の陳述をしてくださった杵渕陳述人の御意見も、まさにそういった国民世論を反映したものであったかというふうに、大変、私は改めて気づかされた思いがいたしました。
さて、次に渡邊陳述人に伺いたいと思います。
同じく、政府案についてはいろいろ評価いただきましたけれども、民主党案、これについては部分的にお話しくださったところもありますけれども、民主党案全体について、そしてまた現行法についてどのような評価をしていらっしゃいますか。
■渡邊弘意見陳述人(宇都宮大学教育学部教授)
現行法については、先ほど少し政府案と比較して申し上げたと思うんですが、民主党案の、私は非常に共感する部分というのがございます。それは、例えば共生の精神とか、先ほども申しましたように情報、非常に政府案と違う、異なる部分というのはやはり状況認識の問題かなと思うんですね。かなり具体的なところまで踏み込んで書かれているというところが感じられました。
特に非常に、この辺はむしろ検討していただきたいというところは、やはり職業教育の問題あるいは情報文化社会に関する教育、先ほども申しましたように、私も附属学校にかかわっていて、情報モラル教育の問題ですね、有害情報あるいは個人情報の保護とか、こういうようなもののあり方というのは、まさに今日的な問題かなという気がしております。ですから、その辺の部分はやはり非常に重要な御指摘かなと。
また同時に、これは政府案も同じですが、家庭教育、これはやはり、むしろ親の問題というのは非常に大きいので、第一義的な責任というふうに明記したというのは非常に重要な指摘かなと。これもつけ加えておきたいと思います。
以上です。
■西村(智)委員
ありがとうございます。
続いて、渋井陳述人に伺いたいと思います。
長く教育現場におられたということで、先ほど、文部省の指導に従ってきたというような本音のようなお話もぽろっと出てまいりましたけれども、恐らく渋井陳述人が現場におられたときというのは、現行の基本法の時代でしたでしょう。現行の教育基本法についてはどんなふうに評価をしておられますか。
■渋井休耕意見陳述人(芳賀保護区保護司)
教育基本法の改正についての国民世論の比率は少ないと今先生がおっしゃいましたけれども、我々現場におっても、よっぽどでない限り、教育基本法にまでさかのぼって子供の、生徒児童の教育に携わるということは、まず現実問題としてないと思うんですね。
我々は、学習指導要領によって、そしてその学習指導要領に基づいて、その次の段階として、例えば、こういうふうな教育課程一般という、これを読んで、そして各都道府県ごとに県の教育委員会としての考えを持って、その後自校化に入る。そういう手順を踏んで、学校における全体計画なんかを立てられるわけです。
したがって、教育基本法にまでさかのぼるということまではいかないで、やはり学習指導要領はどのように改訂されているのか、10年に1度改訂になりますので今回で5回目だったと思いますけれども、そういうものをやってみて、そして自校化することで精いっぱいで、教育基本法までさかのぼることは、まず現実の問題としてはないと思うんです。
ただ、昭和22年にスタートしたときには、例えば道徳の時間はなかったわけです。全教科、全領域で道徳をやる、人格の完成を目指すということで、特に徳目についてはなかったわけです、具体的なものは。それでは徹底しないということで、特設の時間が設けられたのが昭和33年です。
そういうことで、私は、今の日本の教育の現状と教育基本法を見た場合に、例えば、先ほども道徳心という、あるいは愛国心というのがありましたけれども、既に指導要領では、愛国心という言葉が昭和53年の指導要領で既に示されているんですよね。そういう言葉は、愛国心あるいは隣人愛とか、そういった言葉がもうぼんぼん出てきているわけです。だけれども、教育基本法と比べてみると、非常に乖離があるといいますか、離れ過ぎているような感じを持ったわけです。
そういう点で、やはり私は、いいところをとって、そしてやるべきだということが1つ。
それから、教育基本法は、今回でも、新聞報道あるいは特別委員会の放映はされておりますけれども、実際に、自民党案、政府案、あるいは民主党案は新聞紙上で紹介されていないんですよね。具体的に報道されていません。だから、やはり改正に対する世論は低いんではないかなと思います。我々教育で飯を食ってきた者でも、いわゆる教育基本法にさかのぼって教育を考えるということは、指導要領までということだと思うんですけれども。
■西村(智)委員
ありがとうございます。
それでは、戻りまして、杵渕陳述人に伺いたいと思います。
小中学校は地域の教育活動の拠点であるというようなお話をいただきました。私もそうあるべきだと思います。地域に開かれた学校で、子供だけではなくて、いろいろな世代、そしてまたいろいろな言語、宗教、いろいろな人たちが、障害を持っている人も集まってこれる、そういう拠点であるべきだというお話、本当に感銘を受けたんですけれども、その話の流れで、杵渕陳述人は、ただ、その学校が今少し機能が弱まっていて、実際に多くの子供たちが塾に行ったりしている、それが結局家計を圧迫することにもなっているというようなお話をしてくださいました。
実際、日本の家計における教育費の占める割合というのは、これは他の諸国と比べても極めて高いものがあります。OECD諸国の中でも、日本の中で、例えば高等教育の家計負担割合になりますけれども、大体韓国と並んで6割ぐらいが家計の負担であるというようなこと。こういう、日本では、教育にかける費用というものが公的な負担ではなくて、多くはいわば家計の負担になっている。
ここはやはり、私は、これから教育の機会均等ということを考えていく上でも大変大きな問題になっていくのではないかというふうに考えておりますけれども、杵渕陳述人は、この教育の機会均等を確保するという点から、日本のこういうふうに教育費が非常に家計を圧迫しているという現状をどんなふうに見ておられますか。民主党は、これは条文の中で解決しようと努力をいたしまして、GNP比に占める教育費の割合を示すべきだというふうに盛り込んでおりますけれども、いかがでしょうか。
■杵渕陳述人
先ほど開陳させていただいた中身は例えの例でありまして、教育費が、これを公教育と言ってはいけないんだと思うんですけれども、要するに公費負担で学校に行けるという、今の制度もそうで、その中において、その上にステップしていくについて、要するに、学校の授業だけでは足らぬという現実が実際あるわけです。ですから、それを補うがために塾に行くというのは、これは機会均等から外してもそれはいいと思うんです。
だから、学校の中で教えるものですべて受験もクリアしていくんであれば、そういう発想にはなってこないんだと思うんですよ、お金がかかるという発想。ただ、クリアをするために、私の場合は、自分がクリアできなかったから、子供にクリアさせてやりたいから、ちょっと足りないところを塾に行かせています、実際。これは大変です。私は小遣いありませんから、私のもらった分だけは全部ということになるんですけれども、そういうところでやっています。
それと、一番先にあったのは、学校の開放の問題とか地域の問題なんですけれども、地域の問題、地域に今学校が何をしているかというのは、多分どこも同じと思うんです。施設の開放をしているだけでありまして、学校が持っている能力を地域に開放しているわけではありません。そこを一緒にやったらどうかというのが私の発想でございます、ちょっとそれましたけれども。
家計費が高くなれば子供を産む量は自然と減ると思います。それは例です。だから、全部教育が公費でできるのであれば、これは一番いいでしょうと思いますけれども、果たしてそれだけの財政が今ありますか。地方は特にありません。国の方で全部くれるのなら、我々宇都宮は宇都宮で独自の政策をとっていきたいと考えております。
以上です。
■西村(智)委員
続いて、渡邊陳述人に伺いたいと思います。
ここのところ、教育基本法特別委員会の中で新たな話題となっておりますことの一つに、タウンミーティングでのいわゆるやらせ発言というものでございまして、青森県で開催されたタウンミーティングで、内閣府が出席者にこういう発言をしてくださいという、そういう依頼をしていたということが明らかになりまして、それは内閣府の方もお認めになったわけであります。
渡邊陳述人がことしの9月、この宇都宮で開催された教育改革フォーラムに出席されて御意見を述べられておられますけれども、タウンミーティング的なものでありますね。御出席になられたということで伺うんですけれども、こういう政府が主催するタウンミーティングで、そのように政府側の方からこういう意見を出してくださいと求められるということについては、どんなふうにお感じになりますか。
■渡邊陳述人
問題になっているのはよく承知しております。
ただ、9月10日だったと思うんですけれども、そのときに、中教審の方、見城委員さんもいましたけれども、かなり私は批判的に、学校で朝御飯を食べさせる、つくるなんというのは、そんなのおかしいじゃないかとか、全然そういう今のようなことはなく、比較的自由にそういうふうな私個人の意見を述べさせていただきました。今回もそういうことで、私自身の意見ということでございます。
■西村(智)委員
出席者からの自由な発言の時間というものもあった、会場の皆様との意見交換の時間もあったようですけれども、やはり意見は自由にフロアから述べられる、その権利、それが確保されてこそのタウンミーティングであろうと私も思っております。
最後に、渋井陳述人に伺いたいと思います。
渋井陳述人は、先ほど、民主党の案ですと、例えば首長の政治思想、政治性が強く入ってくるおそれがあるというふうにおっしゃいました。ただ、私たちもいろいろ検討いたしましたけれども、実際には、今の教育長、そして教育委員会のメンバーは首長が選ぶことができるということになっておりまして、要は、間接的にではありますけれども、既にそこに政治家の意図というものは入るわけでありますね。
渋井陳述人は、いわゆる教育行政のあり方、教育委員会をメーンにお答えいただきたいと思うんですけれども、望ましい教育行政のあり方というものはどういう形であるとお考えになっておられるでしょうか。
■渋井陳述人
先生おっしゃるとおり、投票によって首長が決めるとなりますと、左に寄った人がなるか右に寄った人がなるかそれはわかりませんけれども、地方公共団体を県と考えるのか、市町村まで含めて考えるのかによると思います。
一つは、財政力の小さい地方公共団体になりますと、非常に、国からの援助が直接なくなってしまうとか、そういう財政力の心配によって影響を及ぼすんじゃないかなということ。
それから、教育委員の任命のあり方が、現行では一応議会の承認を得るとなっておりますけれども、どうも偏るのではないか。選ばれても、教育委員会が形骸化しているといいますか、教育長だけでやって、それから、ただ賛成と言うだけで批判的な意見は述べないというようなことで、要は、教育委員の選び方によって違うんではないかなということと、小さな教育委員会ではすべての指導助言ができなくなるんではないか、そういう心配もございます。
それから、県の教育委員会になりますと、やはり多少教育の経験者でないと、教育長とかそういうものは務まらないような感じもするわけですね。教育について非常に詳しい人でないとうまくいかないんじゃないかな。
したがって、教育委員会が形骸化してしまうというようなことで、両方にも一長一短はあると思うんですけれども、現行のような形でも一短あるし、私は、一応、そういう財政力の小さいところでは理想的な教育ができないおそれがあるんではないか、そういう心配を申し上げたわけでございます。
■西村(智)委員
子供たちの育ちにとって大事なものは、私は、やはり豊かな経験といいますか、豊かな出会いと、そしてまた豊かな挫折だと思います。ぜひ、渋井陳述人には、大変なお立場だろうと思いますけれども、今後とも頑張っていただきたいと思います。
時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。