■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美でございます。
男女雇用機会均等法の20年目の見直し、充実した議論が行われるようにと多くの皆さんが注視する中ではありましたけれども、会期末の日程で、大変残念ながら、衆議院においては2日だけの審議となってしまいました。今ほど小宮山委員と川崎大臣の質疑にもありましたとおり、今回の均等法の改正というのは、本当に奥行きの深い労働法制の中でも、とりわけ、今までこれが日本型の雇用慣行だと言われてきた中で差別を受けてきたものをどうやって救済するかという本当に重大な重要な改正案だと思っております。その審議がこのような形で短時間の中で行われること、大変遺憾でございます。
きょうは、この改正案の中で浮かび上がっている問題点、そして次につなげるための希望の芽出し、これもあわせてしていけるように行っていきたいと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。
きょうもたくさんの方が傍聴席に来られています。特に、男女雇用機会均等法は女性労働者の福祉の向上というような観点からスタートした法律でありましたので、注目している方というと、やはりどちらかというと女性労働者の方が多いのかもしれません。
その象徴といたしまして、本当に、この20年間は多くの方々が、この均等法をよりよい法律にしていきたい、そしてその運用においてもきっちりと一人一人の労働者の権利を確保するために運用してもらいたいということで取り組んでこられました。しかし、振り返ってみますと、やはり男女の差別というのがむしろこの雇用均等法のもとで固定化してきたのではないかと思われる部分も大変多くございます。それは、日本の雇用慣行が、やはり男性が仕事、女性が家庭で家事、育児、介護をやるというその性役割の意識を前提として、女性に低い賃金の仕事しか与えなかったりしてきたことであるというふうに思っております。
今回の均等法は、間接差別が盛り込まれることになりました。私たちは、この法律がこの間接差別の導入によって本質的に変わっていくのではないかということを大変期待しておりました。小宮山委員お話しのとおり、ワークライフバランスの導入は、男女双方に対する差別の禁止が盛り込まれたことから、新しい差別禁止の新しい基準として確立することが求められているわけでございます。ところが、今回の均等法のまさに肝になるところの間接差別、これが、この議論の経過を見ておりますと、大変異質なものに変化してきたというふうに私たちは見ております。
大臣、まず1点、伺いたいと思います。
今回、新たに間接差別禁止規定を導入するそもそもの趣旨、これは一体何でしょうか。現行法のもとで対処しにくい差別、ますます見えにくくなっている差別を可視化して、公序に反するもの、許されないものとして明確にしていくことだ、これが間接差別禁止導入の趣旨であると考えるのですが、いかがでしょうか。
■川崎二郎厚生労働大臣
従来は、男女別定年制、女性結婚退職制度など、明らかな女性差別が多かった時代がございます。近年、例えば事業主によっては女性を採用、登用しなくて済むよう女性が満たしにくい要件を課すなど差別事案が複雑化する中で、形を変えた差別への対応が問題となってきております。世界的にも同様の傾向が見られ、多くの先進国で間接差別の規定が設けられており、女子差別撤廃委員会からも勧告がなされているところでございます。
政治的に申し上げると、昨年の暮れの政労トップ会談、すなわち小泉総理と高木連合会長の会談の際にもこの間接差別という問題が初めて取り上げられました。
そうした中で、今般、新たに間接差別の規定を設けることといたしたものでございます。
■西村(智)委員
その間接差別についてなんですけれども、厚生労働省は、審議会から建議、そして法案要綱、法案とする形の中で、その間接差別の基準について省令で定めるというふうにしているわけでございます。
その間接差別が、研究会の中では7つの例示がされていた、ところが、まずはコンセンサスのあるものからということで設定しているということなんですけれども、私は、そもそも差別の基準をコンセンサスのあるところから決めていくということはおかしいのではないかと思っております。公序に当たるかどうかは、それはコンセンサスの問題ではなくて価値判断の問題であります。日本政府が、そして立法者としての国会が、差別に対してどのような価値判断を持っているか、ここが問われているわけでございますし、また、間接差別禁止規定、この導入の趣旨からしても、範囲を限定するということは矛盾するのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
■北井久美子政府参考人(厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)
御指摘のように、何が違法で何が公序かということについては社会一般の価値判断によると考えておりますけれども、間接差別については、我が国において、その概念も十分理解されておらず、社会一般において間接差別が違法であるという考え方すら浸透していない状況にあるのではないかと思っております。
そうした状況の中で、間接差別を初めて男女雇用機会均等法に規定するに際しましては、少なくとも雇用の当事者である労使の間において間接差別として違法であるとコンセンサスが形成されたもの以外のものについてこの均等法上違法と評価していくことはできないのではないかというふうに考えたところでございます。
■西村(智)委員
余り言いたくはありませんが、何が差別かを決めるときに、差別されている側と差別をしている側が話し合って合意するということが一体あるのでしょうか。
均等分科会においては、研究会報告の7点を3本に絞り込んだ、こういう議論経過について、実は、昨日参考人にお伺いをいたしましたら、7点から3本に絞り込むという議論の経過はなかったというふうに発言しておられました。コンセンサス、ここは譲ってそれだというふうにいたしますが、そもそも、そのコンセンサスについてもあったと言えないのではないでしょうか。
■北井参考人
今回の改正に当たりましては、平成17年12月27日に厚生労働大臣に対して労働政策審議会から建議をいただいておるところでございますが、その本文におきましては、明確に対象基準等を3つの要件とすることが書かれております。
こうしたことで、公労使一致の建議としていただいておるわけでございますから、私どもはこれをコンセンサスがあったものであるというふうに認識をしているわけでございます。
■西村(智)委員
では、どちらかの認識が誤っているということだと思いますね。ですので、コンセンサスというふうにはやはりこれは言えないと思います。厚生労働省が法案要綱をつくる段階でそのようにしたということですね。
私は、ここはやはり十分議論は尽くされてこなかったというふうに言わなければいけないと思いますし、また今後、この法案、仮に今回改正がなされたら、見直しの時期を迎えてくることになるわけです。その審議会においても、このような、お互い立っている立場によって見方が違うという議論経過をたどらないように、十分議論が尽くされるように、そこは留意をしていただきたい。強く申し上げます。
さて、間接差別の省令による限定的な列挙、これについてはもうずっとお話があります。大変大きな異論、反論があるわけでございます。ここはまた後との関係になってまいりますけれども、3例が、とにかくこれを間接差別ですよということにして、社会的にまだ認知されていない法理であるから、ここからまず浸透させていくんだというふうに厚労省の方はおっしゃっておりますけれども、実際に雇用の現場というのは、3点にとどまらず物すごく激しい勢いで変化しております。
例えば、世帯主要件というようなものは非常にわかりやすい。これは指導もしやすいことだと思います。しかし、実際に、この間接差別の3点の限定的な列挙のまさにその網の目をくぐるようにして、また新たな差別が生まれてくるかもしれない。実際に、生まれてくるという懸念の声は大変多くあります。私もそのように思っております。実際に、こういう3点の限定列挙で、これから生じようとする現状に本当に対処できるというふうにお考えでしょうか。
■北井参考人
この改正法案におきましては、初めてこの間接差別の概念を均等法上に位置づけるということから、省令でこの3つの措置を列挙するという形をとらせていただくことにしたいということでございますが、省令で列挙するということは、必要があれば、法律を見直さなくても省令によって対象となる措置の見直しができるという法的仕組みであるわけでございます。私どもは、この均等法上の位置づけに当たり、こうしたことで出発をしたいというふうに考えているところでございます。
省令につきましては、判例の動向などを見ながら適時適切に見直しを行うことといたしているところでございまして、具体的には、今後新たな判例が出された場合であるとか、そのほか、均等室への相談事案において、間接差別の対象とすることが適当ではないかというような事案が出てきたような場合、あるいは、関係審議会において間接差別の対象の追加などの提起がなされたような場合につきましても見直しの契機となっていくものと考えておりまして、職場の現状におくれることなく適切に対処することができるというふうに考えております。
■西村(智)委員
行政指導の対象を省令に定める方針にした、適時適切に見直しを行っていくということなんですけれども、そもそも省令で列挙されているものはいいでしょう。ですが、省令で列挙されていない対象、これが生じたときには、ある時点においてそれは範囲が限定されていることになるわけです。
こうした行政指導の対象はあらかじめ排除しない法的な枠組みにしたということなんですけれども、そもそも、その対象が定められているというこの方式は、他国の動向から見ても大変異例なことなのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
■北井参考人
確かに、諸外国におきまして、今般の改正法案と同様に、間接差別の規定の対象を下位法令で列挙するという方式をとっている例は承知しておりません。その意味におきましては、我が国独自の方式と言えると思います。
しかしながら、何度も繰り返して恐縮でございますが、我が国でまだ十分浸透していない、判例の蓄積もない間接差別の規定を均等法上の違法として盛り込むに当たりまして、やはり対象となる範囲を明確にする必要があることから厚生労働省令で規定する、そして必要な見直しが柔軟にできるというような法的仕組みにするということにしたわけでございまして、これが我が国においては間接差別を法制化するための一番適当な方式であるというふうに考えております。
■西村(智)委員
私は、今、北井局長お答えになりましたけれども、これが本当に最適の方法かということについてはいろいろ議論しなければいけない点ではあります。
つまり、それは、この間接差別の導入の仕方が今の我が国にとって最適だというのは、どこの目から見た最適なんでしょうか。実際に働いている人たち、今、低賃金に苦しんでいる人たち、あるいは同じ仕事をしているのにいわれなき理由で退職や解雇などに追い込まれる人たち、そういった人たちの目線から見たときに、これは最適な導入の仕方だということは、これは口が裂けても言えないのではないですか。今回はそこが問われているんだと私は思っております。
ですので、そこはかみ合わないところでありますし、私たちが修正案を野党で共同で提案させていただいた大きな理由の一つでありますけれども、このことは大変重要な課題ですし、大きな問題でありますので、ぜひ今後も議論させていただきたいというふうに思っています。
ところで、CEDAWの勧告では、「直接及び間接差別を含む、女性に対する差別の定義が国内法にとりこまれることを勧告する。」とあります。今回の法改正が、このCEDAWの勧告を満たしているとは思えない、これは私たちの見方でございますが、いかがでしょうか。
■北井参考人
改正法案におきましては、間接差別の概念について定めておりますし、また、女子差別撤廃委員会の最終コメントにおきまして指摘がなされておりますコース別雇用管理制度についても、厚生労働省令に規定することを予定しておりますことから、この女子差別撤廃委員会の勧告に沿ったものであるというふうに私どもは考えております。
■西村(智)委員
そこは沿ったものだということなんですけれども、これは小宮山委員の質問をまたぶり返すことになってしまうのですけれども、そこはやはりかみ合わない。なぜ日本がこれほどまでに女性差別撤廃委員会、ILOなどからたびたび勧告を受けてきたのか、その根本的な構図をここでしっかりと見直していく必要があったんだろうと私は思っております。
そもそも、国際標準は、間接差別は限定的には例示列挙をしない。大臣が冒頭おっしゃいました、大変差別も複雑化している、見えない差別に形を変えていっている、こういうことを洗い出していくために間接差別というのは導入していくのであって、それが国際標準であります。
しかし、日本の中では、もう既に限定的に例示をされているということは、それ以外のことが間接差別に当たらないのではないか。こういうことになってまいりますと、もちろん司法への影響も大変懸念をされるところでありますけれども、自分が受けているのは差別ではないかと思った労働者が、相談に駆け込むときに、大変大きなハードルと厚い壁をその労働者の目の前につくってしまうことになるわけでございます。
それでは局長、教えていただきたいんですけれども、CEDAWに間接差別の禁止規定を報告することになるのだと思います。どのような英文で報告するのでしょうか、教えてください。
■北井参考人
女子差別撤廃委員会に報告をする際の間接差別の規定の英文については、今般の改正法案が成立してから検討をさせていただきたいと考えております。
■西村(智)委員
まだ決まっていないんですね。
これは7条を英訳するのですか、それとも省令を英訳するのですか。
■北井参考人
それもまだ調整が必要であると思いますけれども、今回の改正で間接差別の概念を導入したこと、それから、法令の概要、法律と省令の概要等を報告することになるのではないかというふうに思います。
■西村(智)委員
それでは、先ほど私がCEDAWの勧告を満たしていないのではないかと申し上げたときに、局長は、勧告は満たしているというふうにお答えになりましたが、それはどうやって判断されて先ほどの答弁になったのでしょうか。
■北井参考人
女子差別撤廃委員会は、直接、間接差別を含む、女性に対する差別の定義が国内法に取り込まれることということ、それから、均等法のガイドラインを改正することということを勧告されているところでございます。
今般の改正法案におきましては、間接差別の禁止をこの法律できちんと盛り込んでおります。そして、間接差別の3つの要素というものをすべて規定しているところでございますので、間接差別の規定については勧告に沿って実現したものというふうに考えているところでございます。
確かに、日本の、我が国の均等法は、直接差別は何々、間接差別とは何々、そういう定義を書く方式はとっておりませんけれども、これは諸国においても、必ずしもそういう形で述べている均等法制ばかりではないのでございます。内容として、直接差別、間接差別の禁止が均等法制に盛り込まれているということが実現すれば、これは勧告を受けとめて政府として措置をしたということになるのではないかというふうに思っております。
■西村(智)委員
何だか頭がごちゃごちゃしてきましたけれども、つまり、CEDAWの勧告は満たしている、しかしどのように報告するかはまだ決まっていない、そして、他国での間接差別もいろいろな形で定義をされており、日本の間接差別の、どういう形でやられるかわからないけれども、それもCEDAWの勧告に沿ったものであるということであるんだろうと思うんですけれども。ですので、教えていただきたいのは、それでは、CEDAWに報告するときにはどのような形で報告をするんでしょうか。もう一回、済みません。
■北井参考人
雇用の分野において、雇用均等法を改正し、間接差別の概念を導入したということなどを報告することになると思います。
■西村(智)委員
日本の政府と国際機関との距離というのはどうなのかというふうに思うわけなんです。この間接差別の導入について、本当に何度も勧告を受けている。これは本当に日本国として恥ずかしいことだと私は思います。
今回は、この改正案でしっかりとCEDAWに報告をすることができるんだというふうに期待はしていたんですけれども、今のように、どの部分を報告するのかわからない、そこは意見の相違があります。そのあたりについては、先ほどの小宮山委員の質問の続きになるわけでありますけれども、私たちは、やはり間接差別というのは限定的に列挙をするからおかしくなるんですね。ですので、限定的な列挙というのは、やはりここはいろいろな意味で今後の懸念材料になっているわけでありますので、ぜひこのあたりはもっと深掘りの議論をしていかなければいけないところであったというふうに思っております。
時間が限りがありますので、続いて、コース別雇用管理制度について伺いたいと思います。
雇用管理区分というのは、私たちは見直していくべきだと思っておりますけれども、現状において、この雇用管理区分は、残業をするかどうか、つまり労働時間です、あるいは転勤を要件として雇用管理区分しているケースが大変に多いようであります。厚生労働省は、この残業や転勤を要件として区分するという日本の企業慣行に対して、どのような認識を持っておられるのでしょうか。
■北井参考人
日本の企業慣行について、一言で認識ということになると、なかなか難しいと思います。
残業や転勤を要件とした雇用管理につきましては、例えば今回、均等法改正案の中で省令でも列挙したいとしているコース別雇用管理の総合職の募集、採用における全国転勤要件などについては、合理的な理由がなければ、これは間接差別として違法としていくことにしたものもあるわけでございますし、そのほかのもろもろの要件では、これは合理性が大いにあって、特に問題にすることもないというようなケースも大いにあるわけでございまして、一言で企業慣行についての認識というのは、なかなか答えられないというふうに思います。
■西村(智)委員
それでは、具体的に伺いますけれども、総合職の圧倒的多数が男性、一般職に圧倒的な多数を占めるのが女性、こういう実態は間接差別に該当すると考えますが、いかがでしょうか。
■北井参考人
ただ単に男女の数の差だけを見て、結果の数字だけを見て、直接差別であるとか間接差別であると言うことはできないというふうに思います。
■西村(智)委員
では、どうやってそれが間接差別に当たるかどうかを判断するのですか。
■北井参考人
例えば、総合職では男性が多い、一般職では女性が多いといったようなケースについて御相談があった場合においては、そういった結果がどういうことで生じているのかということをきちんと分析していく必要があると思います。例えば、これが極端な話、総合職は男性のみの求人であるとか、そこまで極端でなくても、男性に対して優遇する、男女異なる取り扱いがあった結果、総合職については男性が多いというような結果になっているようなケースは、これは均等法上の明確な直接差別、均等法上違反として是正を求めていくことになります。
それから、今度、間接差別で入れようとしている全国転勤要件が、これは施行後の話でございますけれども、合理的な理由がなく問題であるというようなケースについては、これは間接差別で対処をしていくことにもなります。あるいは、しかし、いろいろ調査をし、事実を把握いたしましても、それは男女異なる取り扱いをしているのではなく、結果としてそういう数字になっているといったようなケースについては、これは法違反というような問題は生じないケースもある。これはケースによってさまざまであるというふうに考えております。
■西村(智)委員
全国転勤要件ですとか、あるいは、総合職が男性のみの採用で、一般職が女性のみの採用というのは、これはもう既に基準の中に、3点の中に入っておりますし、非常にわかりやすいものでありますね。
例えば、性役割の意識に基づいて発生しているというような事案については、どのように判断をされるのでしょうか。
■北井参考人
どのような事例を想定しておられるのかちょっと明らかではないので、お許しいただきたいのですけれども、例えば労働者が女性であることのみを理由として、あるいは社会通念として、女性労働者が一般的あるいは平均的に能率が悪いとか、家族的責任を持つとか、勤続年数が短いといったようなことを理由として女性労働者に処遇の差をつけるというようなことになれば、これは法違反、均等法なり労働基準法違反というようなことになるというふうに考えております。
■西村(智)委員
ちょっと聞き方が漠としておりましたので、後ほどのパートのところでまた詳しく伺いたいと思います。
さて、コース別雇用管理制度、これを私たちはぜひ見直していきたい、こういうふうに考えております。コース別雇用管理制度などは、これは企業の人事政策だというふうに言われることは多いわけでありますけれども、しかし、それも間接差別、性役割意識に基づく観点からの洗い出しが必要であると思っています。
いずれにいたしましても、このコース別の議論になりますときに、コースの転換制度がありますよということを時々大臣なり厚労省はおっしゃるわけでありますけれども、実際に、コース転換制度の実態というのは、これは厚労省が言うほど機能していないのではないか。
転換制度がある企業もまだ限られておりますし、実際に、その制度があるからといって転換している人は非常に少ない、参考人の方のお話の中でもありました。例えば、コースを転換しようというときに、非常にハードルの高い資格試験をクリアしなければいけない。それまで例えば一般職として働いていた人に、突然高いハードルの資格試験などを目の前に提示されても、そもそも、それまでの職業の中でそういったような訓練を受けていなければ、チャレンジすることすらできない、転換のためのスタートラインにさえ立てないというようなことが発生しているわけであります。
であるからして、私は、この指針の考え方、これ自体を見直すべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
■北井参考人
今お話しの、コース別の雇用管理をやっている企業において、コース転換制度があるケースについてでございますが、これは、コース別雇用管理の存在自体が、転換制度があるといったようなことだけで正当化されるわけではないわけでございます。しかし、コース別雇用管理制度が常におかしいというわけでもないわけでございます。
やはり、性差別の有無の判断に当たっては比較の対象を定めることが必要でございますから、雇用管理区分ごとに比較をするということにしているものでございまして、雇用管理区分があるからコース別雇用管理の存在が正当化されるといった関係にはないし、逆に、コース別雇用管理制度が、転換制度があるということだけで正当化されることばかりでもないという、いろいろなケースごとの関係になるんだろうと思っております。
いずれにいたしましても、転換制度があることは望ましいことではございますが、転換制度につきましてのハードルも、御指摘のとおりのところがあると思います。
いずれにしても、コース別雇用管理の留意事項におきまして、望ましい事項として、転換のチャンスが広いことといったようなこと、あるいは、転換のときにはきちんとした処遇の位置づけをするというようなことも掲げて、周知や助言に努めているところでございまして、この留意事項にのっとって、コース別雇用管理についての必要な助言をしていきたいというふうに思っております。
■西村(智)委員
転換制度があるからといってコース別を正当化するということではないというような御主張は受けとめますが、これはまた、CEDAWの中では、このコース別人事管理制度について大変鋭い批判が相次いでいるというふうに聞いております。実際、日本レポート、日本政府レポートの審議会の中では、第4回、第5回政府報告書についての審議の中で、コース別人事管理制度の一般職やパートタイム労働者に圧倒的に女性が多いことは間接差別になるのではないかという鋭い指摘が相次いだということであります。
それでは、先ほどの問題に戻りますけれども、CEDAWへの報告の中では、この指摘についても何らかの報告をされるのでしょうか。
■北井参考人
コース別雇用管理についての報告もCEDAWにはしなければいけないと思っておりますけれども、その詳細についてはまだ検討し切れておりませんので、これから検討していくことになるということでございます。
■西村(智)委員
本当はここで引き下がりたくはないんです。しっかりと前線に立ち向かっていきたいんですが、大変残念ですけれども、時間がございません。私たちは、やはりこの雇用管理区分は見直すべきだというふうに思いますし、今後の審議会の中でもぜひこのことが検討されますように強く要望しておきたいと思います。
さて、転換制度の話に戻りまして、仮に一般職から総合職に転換した場合に、実際には総合職の初任給ベースから処遇されるなど、一般職のときのままか、あるいは賃金が実質的に下がってしまうというようなことが発生しております。こういう場合には、勤続年数を加味するなどのポジティブアクションによって是正を図っていくべきではないかと思いますが、どういう救済をされるのでしょうか。
■北井参考人
コース別の雇用管理を行う場合には、事実上の男女別の雇用管理となってはならないことはもちろんでございますし、どのようなコースを選択された方についても、その能力を存分に発揮して働き続けられる環境づくりに取り組んでいただくことが望まれるわけでございます。
こうしたことで、厚生労働省におきましては、コース別雇用管理についての留意事項を示しておりまして、均等法に照らして女性の能力発揮のために望ましい事項として、まず、転換制度を柔軟に設定することであるとか、転換制度を設ける場合においては、例えば転換時の格付が適正な基準で行われることに配慮した制度設計を行うことが望まれるといったようなことを規定しておりまして、こうしたことに基づいて助言を行ってきているところでございます。
したがいまして、今後とも、この留意事項に基づいて適切な助言等を行ってまいりたいというふうに考えております。
■西村(智)委員
これまでやってきたことを引き続き行うということで、改正後も後退しない、決してその点は後退しないという認識で受けとめさせていただきますが、よろしいですね。
■北井参考人
このコース別雇用管理についての留意事項につきましては、例えば、今回、間接差別の問題となる予定の総合職の募集、採用の全国転勤要件、これは今、留意事項の位置づけでは、必要かどうか見直してくださいということで、望ましい事項として、その程度の助言の対象になっているわけでございますが、今回の改正ができれば、これは場合によっては法違反となる、抵触するんですよというところになるわけでございます。
一方で、引き続き、この留意事項で望ましい事項として、より前向きなお取り組みを促している事項については、少なくともこれは後退することなく、引き続き留意事項に基づいて適切な助言を行っていくということになろうかと思います。
■西村(智)委員
見直していただくということについては大いに期待をしたいと思いますが、やはりもう一度雇用管理区分の問題に戻らなければなりません。
やはりそもそもの問題として、雇用管理区分ごとに男女の処遇を比較するということでは、これはILO100号条約の趣旨に反するのではないでしょうか。また、CEDAW、先ほど議論を御紹介いたしましたけれども、その基準の設定自体に疑問を投げかけております。
指針で規定している雇用管理区分は、これは企業の人事政策とは全く別のものであって、合理的根拠に欠けるものであります。ですので、これは見直し、廃止すべきだと思います。
企業の人事労務管理制度は、企業規模、産業、職種、その他の要素によりさまざまでありまして、長期的視点などということも言われますが、その変動も大変著しいものがあります。雇用管理区分の理由の前提条件そのものが、いわばフィクションであって、雇用管理区分という一律の考え方をとることは誤りではないかと思います。
また、この雇用管理区分、先ほどの小宮山委員の指摘にもありました、国会審議なしに、指針で突然規定されたものであります。労働条件に大変大きな影響を及ぼしているものでありますけれども、いかがでしょうか。
■北井参考人
性差別の有無の判断に当たりましては、比較の対象を定めることが必要でございまして、差別を受けたとされる方と同様の条件にある別の性の方を比較の対象とすることになるわけでございます。そうしたことで、我が国の企業においては、長期的な視点から人事制度が設計、運用されておって、職種や資格などの区分ごとに人材育成や処遇等の仕組みを設定するという雇用管理が広く行われておりますことにかんがみて、雇用管理区分ごとに比較をするということにしているわけでございます。
今、企業においては長期的視点も変動するのではないかという御指摘でございますけれども、仮に長期的視点が変わりましたとしても、雇用管理区分の中での問題が変動するということでございまして、雇用管理区分の理由の前提条件がフィクションという御指摘は当たらないのではないかというふうに考えております。
いずれにいたしましても、雇用管理区分について記述しております指針は、性差別禁止を規定する条文が意味する内容を具体的にわかりやすく示すものにすぎませんで、突然規定されたという指摘は当たらないのではないかというふうに思います。
■西村(智)委員
局長の答弁を伺っておりますと、だんだん、この改正法で果たして何が前進するんだろうかということを改めて考えざるを得ないわけであります。本当にこれで差別がなくなるのでしょうか。そしてまた、賃金の問題というのはこれで解消するのでしょうか。本当に大きな懸念が残るところだと思います。
雇用管理区分は、私はやはり合理性はないと思っております。労働時間と転勤要件などが常に言われるわけでありますけれども、そういたしますと、例えば、残業ができるということが総合職の要件であるとされる場合に、残業することをまた総合職というコースでは求めるわけでありまして、つまりは、そこで期待されているのは、特定の労働者に、家庭生活、生活を犠牲にし、そして朝から晩まで身も心も仕事にささげるということを求めることにつながっていきかねないわけでございます。
ですので、ワークライフバランスという観点からいたしましても、ここのところは私たちはしっかりと引き続き検討事項として上げさせていただきたいというふうに思っております。
さて、賃金格差について伺いたいと思っています。
男女間の賃金格差は一向に解消されておりません。正社員の男女及び正社員、非正社員を含んだ男女で格差が拡大しております。このことは、性差別を解消する効果的な方策が講じられてこなかったことを意味するのではありませんか。
■北井参考人
賃金の男女差別につきましては労働基準法第4条で禁止をされており、また、賃金差別をもたらす配置、昇進や教育訓練については男女雇用機会均等法により禁止されているところでございます。
こうした中で、我が国の男女間賃金格差を見ますと、近年、縮小傾向にはありますけれども、やはり国際的に見てその格差は大きく、パートを含む数字で見ますとさらにその格差が大きくなっておりまして、男女間の賃金格差の縮小は重要な課題であるというふうに考えております。
この賃金格差の生ずる大きな原因として、役職といった職階の問題と勤続年数の差ということが言われております。したがいまして、一つは、女性の職域の拡大であるとか役職への登用といったようなポジティブアクションの実践、それから、仕事と家庭の両立支援による女性が働き続けやすい職場環境の整備ということに努力をしていきたいと思いますし、また、パートタイム労働者の均衡処遇ということについても施策を強化していきたいというふうに考えております。
■西村(智)委員
賃金格差の主要な要因について、男女間の賃金格差問題に関する研究会、ここで報告書が取りまとめられております。厚労省としては、賃金格差の主要な原因は何だとお考えでしょうか。
また、この報告書では、職能資格等級制度など、賃金制度の運用上において女性差別が存在していることを指摘しております。こうした取り扱いを解消するために労働基準法第4条の積極的な適用が必要と考えますが、いかがでしょうか。
■北井参考人
今御指摘をいただきました男女間の賃金格差問題に関する研究会の報告書によりますと、男女間賃金格差で一番大きな要因となっておりますのが職階ということであり、続いて勤続年数ということになっております。したがいまして、先ほど御説明申し上げましたように、ポジティブアクションの推進や両立支援ということによって、女性の登用の促進あるいは継続就労の支援ということをしていかなければいけないというふうに考えております。
それから、職能資格等級制度など、賃金制度の運用上において、男女異なる取り扱い、すなわち性差別的取り扱いがあれば、これは労働基準法第4条違反となりますので、厳正な対処をする必要があるというふうに考えております。
■西村(智)委員
そうしましたら、労働基準法第4条に違反するものとして取り扱う、その場合には、雇用管理区分基準にあります基幹職、補助職といった職務区分も、同一価値労働という観点からいたしますと是正が求められるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
■北井参考人
職種等を超えまして、違う職種の中で価値に基づいて比較をして賃金差別を認定するという、厳密な意味での同一価値労働同一賃金ということについては、我が国では賃金の決め方がヨーロッパなどとは違いますので導入をされておりません。そうしたことから、御指摘の点については妥当しないというふうに考えます。
■西村(智)委員
ここは、もう一つの大きな論点であります。
同一価値労働同一賃金の原則が我が国では採用されていないということでありますけれども、それはやはり大きな問題ですし、私たちは見直すべきであると思っております。ですので、今回の修正案を提案させていただいているところでありますけれども、やはり国際標準である同一価値労働同一賃金の原則を早急に日本の中でも確立することが私は求められていると思います。
それでは伺いますが、非正規雇用者の賃金格差解消のために、間接差別に賃金を含めるべきである、このように考えておりますけれども、いかがでしょうか。
■北井参考人
賃金につきまして間接差別の禁止を均等法に規定するということについては、賃金に関する要件を間接差別の対象とすることについてコンセンサスがいまだ得られていない現状にあること、そして、間接差別は直接差別の概念を拡張するものでございますから、均等法では賃金は直接差別のステージに入っておりませんので、それとの整合性という観点から、現時点では、均等法上、間接差別規定の対象として賃金を考えることはできないというふうに考えております。
■西村(智)委員
それでは、賃金格差というのはどこで解消されるのでしょうか。今回の大きな均等法の改正の中で、やはり間接差別の対象として賃金を含めるべきではなかったか、このように考えておりますけれども、改めてその点について伺いたいと思います。
■北井参考人
今御説明を申し上げたとおり、現時点で均等法の間接差別の規定の対象に賃金を入れることはできないというふうに考えておりますけれども、賃金格差の縮小ということは大きな課題でございますので、ポジティブアクションの推進、あるいはパートタイム労働者の均衡処遇の対策の強化、あるいは配置、昇進についての均等法上の直接差別の問題、あるいは今度入れていこうとしている間接差別の問題に絡んで賃金格差が生じているような問題については均等法で是正をしていくことができるわけでございますので、そうしたもろもろの対策、施策でもって対処をしていきたいというふうに考えております。
■西村(智)委員
なぜ入れることができないのか、その理由がわかりません。今回の均等法改正の中でやはり一番大きなポイント、間接差別ではありますけれども、やはり多くの働く人たちが注目をしているのは何よりも賃金であります。その賃金の格差解消をしっかりと均等法の中に盛り込むことができずに、一体どうやって格差、差別を解消していけるというのでしょうか。
ですので、ここは委員の皆さんにもぜひ御理解をいただきたいところだと思います。今回の均等法改正、やはり間接差別の中に賃金を対象として含むこと、これはどうしても必要なことでありますし、働く人たちが求めている最大のテーマであります。ぜひ皆さんから賛同いただいてこの修正案を成立させたい、そのことを強く要望申し上げます。
パートの均等待遇について伺いたいと思います。
参議院の答弁の中で、パートの均等待遇、均衡待遇というのでしょうか、厚生労働省の方はそのように呼んでおるようでありますけれども、同じ仕事をしていながら大きな格差があるパートに対しては施策を準備すると答弁をしておられます。しかし、実際のところ、同じ仕事をしているというケースではなくて、仕事の内容が多少違っているけれども格差はその違いで説明ができないほどに大きいケースというのが圧倒的に多いのだろうと思います。
そのようなパートに対しての差別を是正する具体的施策を講じるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
■北井参考人
働き方にかかわらず、だれもが安心して働くことができる環境を整備していくことは重要な課題でございますけれども、今御指摘のとおり、パートタイム労働者の処遇については必ずしもその働きに見合っていない場合があるわけでございます。
厚生労働省といたしましては、パートタイム労働指針に基づきまして、使用者である企業側に対して労働者に公正に処遇するよう粘り強く働きかけていきたいと考えておりますし、今後のさらなる対策の強化についても十分に検討してまいりたいと考えております。
■西村(智)委員
今までも指導してきたけれども、まだ格差というのは縮まっていないわけです。この現状をどういうふうにごらんになっているのか、そこは私にとっては大変大きな疑問であります。
そこのところは次の質問とあわせて伺いたいと思いますけれども、正社員への転換制度のある企業というのはまだ四割台であります。実際に制度があるだけで、ほとんど実態はありません。つまり、その転換制度というのは機能していません。このことをどう評価しているのでしょうか。先ほどの指導してきたということと、そして転換制度の実態が上がっていないということ、これをどう評価しているのか。
そして、今後の引き続いての指導の仕方、実績の目標値などを定めて行うということはお考えなのでしょうか。具体策をお聞かせください。
■北井参考人
パートタイム労働者の就業意欲の向上や常用雇用を促進する観点から、パートタイム労働者からいわゆる正社員への転換制度の普及を図ることは重要な課題であると考えております。
このために、これまでも、正社員への転換に関する条件整備を定めたパートタイム労働指針の周知を図ってきたところでございますが、本年度からは、正社員への転換制度の導入について新たに助成金の支給対象ともいたしまして、さらに、転換者が実際に生じたことを支給要件とすることによりましてこの制度が実際に機能していくということを担保しているところでございます。
なお、全国の雇用均等室では、パートタイム労働状況について個別訪問を実施いたしておりますけれども、そうした状況から見ますと、正社員への転換制度があるということだけではなく、実際に転換実績がある程度出ているということも確認されておりますから、事業主の取り組みは着実に進んでいるものと考えておりますが、今後とも、転換制度の導入に取り組む事業主への支援など対策の充実に努めていきたいというふうに考えております。
■西村(智)委員
引き続いての指導などをお願いしたいと思いますけれども、最近は、例えば契約社員、嘱託職員などとして雇用されるときに、長く続く業務であるにもかかわらず、一律に契約更新の回数を、例えば3年まで、5年までという形で、労働者を入れかえる方法などが多くとられるようにもなってきております。これも大変懸念される事柄であります。
これらの形態で雇用される労働者の多くは女性であって、そういう現状からいたしますと、これは過去に禁止されたはずの女性若年定年制の事実上の再現、復活ではないかと思います。更新拒否の規制や有期契約利用の規定なども考えないと、有期契約のルールの明確化だけでは対処できないと思いますけれども、そのことについては具体的にどのように取り組んでいかれるのでしょうか。
■北井参考人
厚生労働省といたしましては、有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準に基づきまして、紛争の未然防止の観点から助言、指導を行っているところでございまして、まずはこの基準の徹底が重要であるというふうに考えております。さらに、今般の改正法案におきましては、雇いどめについての差別的取り扱いを禁止することとしたところでございまして、これらの規定も有効に活用することによって状況の改善に努めていきたいと思っております。
さらには、労働基準行政の方で、労働契約法制あるいは労働時間法制の検討がなされているところでございますので、また検討の過程でもいろいろな議論がなされるものというふうに考えております。
■西村(智)委員
雇いどめの話が出てまいりましたので、関連で伺わせていただきたいと思います。
第9条第4項、「妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。」では、ここには当然雇いどめは含まれると考えてよろしいのですね。まずそこだけ伺います。
■北井参考人
改正均等法案第9条第四項には、雇いどめは含まれないところでございます。
しかし、形式的には雇用期間を定めている契約であっても、それが反復更新されて実質においては期間の定めのない雇用契約と認められる場合には、その期間の満了を理由として雇いどめをすることは解雇に当たるものであって、改正法案第条の対象となるものでございます。
■西村(智)委員
それでは、正規雇用の妊娠、出産解雇だけが禁止されるということではなく、有期雇用の妊娠、出産解雇も無効であるというふうに理解してよろしいのでしょうか。
つまり、正規雇用の解雇だけが禁止されるということになりますと、企業の側はますます首の切りやすい、解雇しやすい非正規でしか女性を雇わなくなるという結果につながる可能性もありますが、いかがでしょうか。
■北井参考人
均等法は正規労働者、非正規労働者を問わず適用されるものでございますから、改正法案第9条の規定は非正規労働者の解雇に対しても適用されるところでございます。
■西村(智)委員
もう1点お聞かせください。
3年以上勤務する派遣社員を正社員にするという申し入れがふえてきたと聞いておりますけれども、先ほどの問題と関連します、長年勤務していても、正社員になった途端に初任給からスタートするために、大幅な賃金ダウンになるケースというのは、これはどのように救済されるのでしょうか。熟練度などを加味したポジティブアクションによって是正を図るべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
■北井参考人
派遣社員につきましては、実際に派遣社員を雇用しております派遣元と派遣先が異なるために、処遇の格差を是正することは一般的に困難な場合も多いと考えます。しかし、御指摘のようなケースにつきましても、事業主が雇用の分野の男女の均等な機会と待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的としてポジティブアクションを行っていくということは可能であるというふうに考えております。
■西村(智)委員
残り時間があと20分ほどになりました。ここからは、午前中の郡委員の質問、そして先ほどの小宮山委員の質問、そして私のこれまでの質問を含めて、確認の意味で21点について質問をしたいと思っております。
1つずつ進めてまいりますが、まず質問の第1。間接差別の定義、法理についての周知は参議院で附帯決議が付されたところです。それをどのような手段で周知するのでしょうか。指針などでの周知が必要ではありませんか。
■川崎大臣
改正法案が成立した場合には、改正法案第7条についての理解を深めるため、間接差別の定義、法理について指針に盛り込むとともに、改正法案第7条の内容とあわせてパンフレット等において周知を図ってまいりたい。
■西村(智)委員
第2。間接差別の定義、法理は、省令で定める範囲に限らず、もっと幅広いことが参議院の附帯決議で付されたところであるが、この内容、広い範囲についても指針等により周知することが必要と考えるが、その手段、方法は何でしょうか。
■川崎大臣
改正法案が成立した場合には、厚生労働省令で規定するもの以外にも間接差別は存在し得るものであり、司法判断として間接差別法理により違法とされる可能性もあること、厚生労働省令については機動的に対象事項の追加、見直しを図る考えであることについて通達に記載をし、これらについて改正法案第7条の内容とあわせてパンフレット等において周知を図ってまいります。
■西村(智)委員
第3。4月25日の参議院厚生労働委員会の質疑において、北井局長は「私どもで現在考えております3つの措置以外につきましてもその対象となり得るものは幾らでもあるというふうに考えております」と答弁していますが、どのようなものが対象となり得ると想定しているのでしょうか。
■北井参考人
参議院での答弁の趣旨は、今回、厚生労働省令で規定する予定であるのは3つの措置であるが、間接差別は、性中立的なものであれば、およそどのような措置でも俎上にのり得るものであることから、これら3つの措置以外の措置についても厚生労働省令に規定され得る、このため省令を適時適切に見直すということでございます。
■西村(智)委員
第4。間接差別の定義、法理を踏まえれば、参考例は研究会報告7項目に限られないはずです。したがって、7項目に限られないこと、7項目以外の間接差別に抵触する可能性のある基準について、指針等で明らかにすべきではありませんか。
■北井参考人
改正法案が成立した場合には、法律の適正な履行を確保するために、まずは男女雇用機会均等法上違法となり得る3つの措置につきしっかりと周知することが重要と考えます。
その上で、厚生労働省令で規定する措置以外のものについても司法判断として間接差別法理により違法とされる可能性もあることについて通達に明記することにより、あわせて周知を図ってまいります。
さらに、一般向けの解説書等において、間接差別の規定についての理解を深めるための参考例として男女雇用機会均等政策研究会報告に盛り込まれている事例についても紹介してまいりたい。
■西村(智)委員
第5。コース別雇用管理以外にも男女均等の趣旨に反する不合理な雇用管理制度は存在します。これらについてもコース別雇用管理と同様のガイドラインをつくるべきと考えますが、いかがでしょうか。
■川崎大臣
御指摘の点につきましては、御意見として受けとめ、労働政策審議会における今後の審議の参考として審議会に伝えてまいりたいと考えております。
■西村(智)委員
第6。事業主が差別意図がないと主張しても、実際には性別を理由とする差別的取り扱いが行われている場合には、均等法6条で是正に向けた行政権限の行使が行われてきているが、そのように判断される場合で均等法7条に基づき省令に列挙しないものについても、6条に基づき行政による助言、指導、勧告の対象となり得ると考えますが、いかがでしょうか。
■北井参考人
改正法案第7条の規定を設けることにより、これまで行ってきた個別紛争解決援助や調停による対応の範囲が狭くなるということはございません。したがって、改正前の均等法に基づき直接差別として違法とされていたものについては改正後においても違法であり、助言、指導、勧告の対象となるものでございます。
■西村(智)委員
第7。実質的に女性であることを理由に不利益取り扱いや排除に関する相談があった場合は、当然、使用者側にその理由を聞き、必要があれば助言をするということでよろしいでしょうか。
■北井参考人
労働者から性別による差別的取り扱いの相談があった場合には、事業主に事実を確認した上で、均等法違反の事実が見られた場合には必要な助言、指導、勧告を行うこととなります。また、均等法違反には当たらないものの、コース等で区分した雇用管理についての留意事項に基づき必要な場合には、助言を行うこととなります。
■西村(智)委員
第8。また、厚生労働省令で定める予定の3項目以外のものであっても、助言の対象となるのではないでしょうか。
■北井参考人
例えばコースを区分する際に、男女共通の基準であっても、家事、育児の負担等を考慮すると女性が事実上満たしにくいものを設けている場合などについては、コース別雇用管理に関する留意事項に基づき、その必要性を検討するよう助言を行っているところでございます。
■西村(智)委員
第9。コース別雇用管理について、職種、資格、雇用形態、就業形態の区分、その他労働者についての区分とは具体的に何を指すのか説明してください。
■北井参考人
コース別雇用管理とは、企画業務や定型的業務等の業務内容や転居を伴う転勤の有無等によって幾つかのコースを設定して、コースごとに異なる配置、昇進、教育訓練等の雇用管理を行うシステムをいいます。
典型的には、いわゆる総合職などの、基幹的業務または企画立案、対外折衝等総合的な判断を要する業務に従事し、転居を伴う転勤があるコース、また、いわゆる一般職などの主に定型的業務に従事し、転居を伴う転勤はないコース、また、いわゆる中間職などの総合職に準ずる業務に従事するが転居を伴う転勤はないコース等のコースを設定して雇用管理を行うものがあります。
■西村(智)委員
厚生労働省令で全国転勤要件を規定したところで、コース別雇用管理自体がなくならない限り何ら問題は解決しないのではないでしょうか。
■川崎大臣
今回の改正法案が成立すれば、第7条の規定により、コース別雇用管理制度における総合職の募集、採用における全国転勤要件については合理性がない限り違法となるものであり、不必要、不合理な障壁を取り除くことにより、男女間の機会の均等が進むと考えております。
■西村(智)委員
第11。コース別雇用管理に関する留意事項についての見直しはどうなりますか。
■川崎大臣
第7条の規定により、コース別雇用管理制度における総合職の募集、採用における全国転勤要件については合理性がない限り違法となることから、コース別雇用管理に関する留意事項を見直す必要があると考えております。
■西村(智)委員
第12。従来、留意事項については、募集、採用、配置、昇進等の差別として、是正のための助言、指導、勧告の対象としてきましたが、今後も同様と確認してよろしいですか。
■北井参考人
従来から留意事項に基づき助言、指導、勧告の対象としてきたところであり、今後も同様でございます。
■西村(智)委員
第13。7条違反に基づいて間接差別として排除される基準に連動して発生した配置、昇進、昇格、賃金、教育訓練、福利厚生、定年退職、解雇に関する男女間差別の是正を均等法第17条に基づいて行うとされていますが、第17条の行政権限行使の法的根拠は何でしょうか。
■北井参考人
例えば、第7条違反の措置により一般職となった者については、総合職との間に配置、昇進や、これらに基づく賃金の格差などが生じますが、これらの第7条違反を原因とする格差につきましては、第17条に基づき、都道府県労働局長が必要な助言、指導または勧告を行うことにより是正を図るものでございます。
■西村(智)委員
第14。その場合、過去の格差に基づく不利益改善はいかにして行うのでしょうか。
■北井参考人
改正法が施行される以前に行われた措置について、遡及して第7条違反を問うことはできません。
なお、そのような事案については、司法的解決として、民法第90条等に基づき、間接差別法理を用いて格差の解消が図られることは考えられ得るところであります。
■西村(智)委員
第15。過去の格差に基づく不利益解消のため、行政として助言等はできないのでしょうか。
■川崎大臣
均等法違反ではございませんが、均等法の趣旨に照らして望ましくない雇用管理制度については、従来よりポジティブアクションの実施を促す助言を行ってきたところであります。
御指摘のような事案についても、同様に対応してまいりたいと考えております。
■西村(智)委員
第16。7条による差別救済対象となった場合の賃金格差の是正は、労基法4条ではなく均等法第7条に基づき行われることになるのでしょうか。
■北井参考人
例えば、改正法案第7条違反の措置により一般職となった者については総合職との間に賃金の格差が生じますが、これらの第7条違反を原因とする格差については、労働基準法第四条違反ではなく第7条違反を原因とする格差として、第17条に基づき、都道府県労働局長が助言、指導または勧告を行うことにより是正を図るものでございます。
■西村(智)委員
第17。募集、採用区分の違い、すなわち雇用管理区分による男女間賃金格差の是正は国連女性差別撤廃委員会の勧告でも取り上げられているが、区分が制度として明確になっていないなど実体もないのに賃金格差の理由をコースによるとして合理化してしまうケースについては、労働基準法4条違反として是正を求めることになるのではないでしょうか。
■北井参考人
実質的に同じ雇用管理区分であるにもかかわらず、女性であることを理由として賃金が低くなっている場合には、労働基準法第4条違反となります。
■西村(智)委員
第18。コース区分が制度として明確になっているが、実際の取り扱いにおいては全く区別がない場合、例えば補助的業務に従事する社員と基幹的業務に従事する社員、転勤のない社員と転勤のある社員で異なる賃金テーブルを適用する制度にして、女性は低い賃金テーブル、男性は高額な賃金テーブルを適用したが、実際には男女で従事している仕事は同じで、高額な賃金テーブルの適用を受ける社員の転勤もそうないといった場合には、労働基準法4条違反になるのではないでしょうか。
■北井参考人
雇用管理区分は別であるが、実質上同一の雇用管理区分として運用されている事案について、女性であることを理由として賃金が低くなっている場合には、労働基準法第4条違反となります。
■西村(智)委員
第19。ILOへの日本政府の回答では、100号に関連して間接差別を含めた議論について、研究会における報告書の取りまとめ、関係審議会での議論、その結果を踏まえた適切な対応をする予定と記載されています。この回答は、100号に関して、つまり同一価値労働同一賃金原則についての回答と理解しますが、それでよろしいでしょうか。その場合、今回の改正では間接差別に賃金が入らなかったことから、ILOに対する回答としては引き続き検討するということでしょうか。
■北井参考人
御指摘の回答は、ILO第100号条約に関して、ILOの専門家委員会からの情報提供依頼に対する回答であります。
今般の改正法案及びこれに基づく厚生労働省令で規定することを予定している内容については、この回答のとおり、労働政策審議会の公労使三者の一致した建議を踏まえ、間接差別について3つの措置を対象とすることとしたものでありますが、今後とも男女の賃金格差是正のために、ILO第100号条約の趣旨にのっとり努力をしてまいりたいと考えております。
■西村(智)委員
第20。男女間の賃金格差、とりわけ非正規雇用労働者の賃金格差について、どのように対処するのでしょうか。
■川崎大臣
男女間の賃金格差の生成に大きく影響しているのが男女間の職階格差や勤続年数格差であると考えられることから、ポジティブアクションの実践を促進することにより、企業において女性が能力を最大限発揮できるような雇用管理を進めるとともに、仕事と家庭の両立支援を行うことにより、女性が働き続けやすい職場環境を整備してまいりたいと考えております。
また、働き方にかかわらず、だれもが安心して働くことができる環境を整備していくことは重要な課題であります。パート労働者の処遇については必ずしもその働きに見合っていない場合もあるため、使用者である企業側に対し、労働者に公正に処遇するよう粘り強く働きかけるとともに、今後のパート労働対策の一層の強化策については、さまざまな観点から十分検討してまいります。
■西村(智)委員
第21。賃金差別問題について、均等法が労基法第4条の取り扱う範囲を狭めるものではないと理解するが、賃金差別問題に関する相談や訴えにどのように対処しているのでしょうか。
■北井参考人
均等法が、賃金差別の問題について、労働基準法第4条の問題として取り扱うことができる範囲を狭めるということはございません。したがって、従前どおり、賃金について性別を理由とする差別的取り扱いがあれば、労働基準法第4条違反となります。
また、配置、昇進について性別を理由とする差別的取り扱いがあったために、結果として賃金にも格差が生じた場合には、均等法第6条または第7条違反に基づき、是正を図るものでございます。
■西村(智)委員
以上で質問は終わりますが、この均等法は、本当に、働く女性たちが20年間、一日千秋の思いで待っていた改正であります。この均等法の改正審議の中でも、まだまだ大変多くの論点が山積みになっているということが明らかになりました。そもそも、やはりこの均等法の原則の中にワークライフバランスという柱をしっかりと通して、そして、同じ働きをした人に同じ賃金という同一価値労働同一賃金の原則、これを早急に確立することが我が国においても早急に求められていることだと考えております。
厚生労働省は労働政策を所管する省庁だと承知をしております。労働者の権利を守るために、ぜひこれからもしっかりと取り組んでいただきたい。私たちも今後の議論にしっかりと加わっていきながら、一人一人が仕事と生活の調和のとれた働きができるように、そして、この賃金の問題は社会のありようを映し出す鏡だというふうに言われておりますけれども、その賃金の問題が、まさに一人一人の働き、生き生きとした働きを約束することができるように、人間の尊厳そのものを確保することができるように取り組むことを改めて決意いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。