■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美と申します。
きょうは、大田参考人そして石井参考人、御多忙のところ御足労いただいて大変ありがとうございます。
20分の時間で大変短いんですけれども、まず、きょう見せてもいただきましたビジョン懇の中間取りまとめ、これは、私たち民主党の部門会議でも先日ヒアリングを受けました。竹中大臣が5月10日に経済財政諮問会議に提出をされた資料とあわせて御報告、御説明いただきましたので、そのことにも関連して質問したいと思います。
この中間取りまとめ、4月28日に出されたものですけれども、1つ目の四角の囲みで「問題意識」とありまして、「何故今分権か」と。私も頭から読んでみました。黒ポツが3つありまして、3つ目のところで、「未曾有の財政赤字を解決し、」と始まるわけですけれども、2行目のところに「国への依存を止め、無駄のない地方財政の姿を作り上げるべきである。」というふうに書いてございます。
まず、石井参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、ビジョン懇の中間取りまとめに「国への依存を止め、」と書いてあります。これはつまり今まで国へ依存してきたということの表現だろうと思うんですけれども、地方6団体、こちらの分権の検討会の中では今まで国に依存してきたというような議論あるいは御自身として国に依存してきたという感覚はおありでしょうか。
■石井正弘参考人(岡山県知事)
少なくとも、私ども、2000年、地方分権一括法が制定されまして、それ以降、自立に向けて懸命な努力をしているところでございまして、そういった中にありまして、我々、国へ依存しているといったような感覚は持ち合わせておらないところでございます。
こういったような表現の背景として、地域の安全、安心をどのように守っていくのかとか、あるいは、地域特性から配慮を要する離島とか中山間地域、こういったものへの温かい配慮、こういったものを国の方ではぜひ地方には配慮願いたい、こういう思いはございますけれども、少なくとも、我々は、自主自立の自治体経営を行っているつもりでございます。
■西村(智)委員
私、先ほどの福田委員の議論を後ろで聞いておりまして、やはり現場を知っている方の本当に心の底から出る心の叫びというような発言は違うなと思ったわけなんですけれども、質問が少し重なりますが、大田参考人に伺いたいと思います。
ビジョン懇のメンバーの中で、そういう意味では現場を知っておられる方がいない。先ほど石井参考人は、依存してきたというふうには思っていないという御趣旨の発言だったと思いますけれども、仮にそういう意見が反映されたらこういう書きぶりにはならなかったんじゃないかというふうに思うんですね。現場の人がこのビジョン懇のメンバーに入っていないというのは、座長としてどういう判断でお決めになられたんですか。
■大田弘子参考人(政策研究大学院大学教授)
申しわけございません。メンバーは私は決めておりませんので、大臣の私的懇談会で、大臣が決めておられますので、お答えできません。
■西村(智)委員
大臣がお決めになったということなんですけれども、座長をお引き受けになっておられますよね。御感想はおありではないんですか。御感想をお願いします。
■大田参考人
私は、昨年の夏まで内閣府に行っておりまして、そこで三位一体改革をやっておりました。そこで、本当に三位一体改革の難しさを骨身にしみて感じました。そこで、一度、その出口の側に向かって、10年先に立ってあるべき地方分権の姿を描こうということでビジョンの懇談会をやっております。そのときにむしろ、今のメンバーは、出口に立って、自由な発想であるべき地方分権の姿を描くというところについてはそれぞれ貴重な意見を持っておられると思っております。
もちろん、足元で今現場の方がどういう御苦労をしておられるのかというのは十分に聞かなくてはいけませんので、可能な限り意見を拝聴する機会をつくってきたということでございます。
■西村(智)委員
10年先を見越して、現場を知っている人がいなくてもいい懇談会だという御発言だったと受けとめます。
もう1つは、先ほどの答弁にもあったと思いますが、ヒアリングなど、あるいは首長さんから意見聴取をしているということで、それらを反映していきたいということだったかと思います。
それでは、そういう聞き取った意見などは具体的にどこまでこのビジョン懇の最終報告に反映されるのでしょうか。形だけの聞き取りにならないか、そういう懸念ももう既にあちこちから聞かれるわけですけれども、それについてはどうですか。
■大田参考人
地方6団体でも検討委員会をつくっておられまして、そちらの議論も踏まえながら議論しております。先ほど石井知事のお話にもありましたように、方向性としてはそれほど違っていないと私どもは思っております。
そういう意味で、中に取り込みながら、反映させながら議論をしております。
■西村(智)委員
ちょっと話が変わりますけれども、この国会が始まったときに、格差ということが随分と言われました。格差がこの国に存在するのかどうか、また、その格差をどうしていったらいいのか。総理に対して格差がよいか悪いかという判断を求める質問に、それはある程度ないと競争しないから、あってもいいんだというようなちょっとした答弁もあったわけなんですけれども、大田参考人に、この格差社会への御認識について少しお考えを伺いたいと思っています。
つまり、どういうことかと申しますと、この後も質問いたしたいと思いますが、新型交付税であります。これは、額が減らされるということは何となくわかるんですけれども、それ以外に、どういう算定の仕方をするのか見通しが全く立たない。こういう状況の中で交付税が減らされると自治体間の格差がますます広がるのではないかというふうに指摘がなされているわけでございます。
受益と負担の関係というのはよく言われるわけでありますし、法人税などについてはそういった視点からの議論はあってしかるべきだというふうに思いますけれども、ただ、完全な受益と負担の関係ですと、お金を払った人が物やサービスを受けるということですよね。そうしますと、これは市場経済で言うところの代金とか料金と余り変わりはないんじゃないかと思うわけなんです。そもそも税というのは所得の再分配機能というのがあるわけですから、そこは国会で議論して、あるいは地方の皆さんからも議論してもらって、国民的な議論を巻き込んで、どういう配分の仕方を選ぶかという政策選択の幅がなければいけないんだろうというふうに思うんです。
そういう意味では、多くの人から納得の得られる仕組みが必要だというふうに思うんですけれども、ただ、今の段階では、交付税が減る、これで格差が広がるのではないかというふうにこれは言われているわけであります。
私の地元も、私は新潟県の選出なんですけれども、雪が大変深くて、山奥に行きますと、
80歳を超えるおばあさんがひとり暮らし、その隣は70歳を超えるおじいさんがひとり暮らし、冬は雪のけをしてくれる人がいなくて、遠くから若い人たちがやってくる。ただ、そこのところも人が住んでいらっしゃるわけですから、除雪費用などは必要になってくるわけです。
そういった格差について大田参考人はどのようにお考えになっているのか、伺いたいと思います。
■大田参考人
ビジョン懇談会では、交付税を減らすという議論はしておりません。その中の仕組みを変えましょう、国が歳出をすべて決めるのではなくて、どう使うかは地方が決めていくというのが望ましい方向ではないか、今、基準づけがない部分について、その部分について地方が自由に使い道を決められるような形はないかということで議論してまいりました。
御質問の格差についてですけれども、過剰な格差はもちろん望ましくありません。ただ一方で、経済というのは新陳代謝がどうしてもあると思います。そのときに、新陳代謝で厳しくなる地域、そこをどうしていくのかが政策だと思いますので、そこは十分に考えていかなきゃいけない。
ただ、格差が全くない、あるいは経済だけで格差をとらえてはいけないということも事実だと思います。その意味で、地方がみずからの個性で、経済だけではないみずからの個性で地域づくりを行っていくような余地を拡大していくことも私は必要だと思っております。
■西村(智)委員
ちょっと新型交付税のこととあわせて伺いたいと思うんですけれども、人口と面積によって1人当たりの税収入額を平準化するというような書きぶりになっているわけであります。
こういたしますと、これは、交付税の機能というのはそもそも水平間調整というようなものもあるわけですが、その機能が変わっていくんではないか。かつ、これは格差を拡大することにつながりかねない。例えばですけれども、面積が小さくて人口が少ない離島などはどうなるのかということにつながっていくわけなんです。
ビジョン懇の中間取りまとめの中には、ここのところは、真に配慮を要する自治体に対してはそれなりの仕組みを確保するということが書いてありますけれども、それは一体どういう自治体なのか、どういう配慮を確保していくのか、これは全く見えていない。
これは一体どういうことになるんでしょうか。格差の存在とあわせて、もう1回伺いたいと思います。
■大田参考人
交付税のこれまでの性格は、国が定めた一定水準の行政サービスを全国どこでも享受できるようにするその財源措置だというふうに思いますが、地方分権の中では、国が決めている部分はなるべく減らしていって、地方の自由にゆだねる部分を拡大していくというのが望ましい方向だと思います。
ただ、先生御指摘のように、地域間の財政力の格差がありますので、むしろその調整の機能を強めていく、格差を是正する機能を強めていくために、国が需要を決める形ではなくて、一定の歳入は保障しましょうという形で配分しようというのが交付税改革の方向です。
そのときに人口と面積というのを出しました趣旨を簡単に御説明いたしますと、地方の歳入というのはさまざまな要因によって違ってまいります。そのうち、高齢化要因とか産業構造の違いによる税収格差というのは自治体の責任ではありませんので、そこについては人口1人当たりの歳入をならすという仕組みが必要ではないかというのが人口です。ただ、これまた先生がおっしゃいましたように、行政コストというのはやはり地理的な状況によっても違ってまいります。そこで、その行政コストをならす1つの方法として面積というものを持ってきております。
離島の例が出ましたけれども、やはりここは真に対応を要するところとして別途の対応を考えなくてはいけない。それはこれからの制度設計の中で議論していかなくてはならないというふうに思います。
したがいまして、自治体間の財政力の格差を調整するという機能をむしろ強めていくというのが交付税改革の方向です。
■西村(智)委員
これは、私も中間取りまとめだとか読みながら思ったことでありますし、そして今、大田参考人のお答えを聞きながら思ったことでもあるんですけれども、それだったら今までの交付税制度とどこがどういうふうに変わるのだろうかというのは、率直に言って素朴な疑問なんです。
どうしても配慮を要する自治体に対しては配慮していく。今それはどういう自治体になるんですかとお尋ねしたら、それもこれからの検討ですということですし、そうしたら、逆に言えば何にもまだ決まっていないということでもあるわけですね。そういう真に配慮が必要な自治体というところの基準が仮に緩くなったときには、これまた財政規律の緩みというものにもつながりかねないわけですから、結局同じことになるおそれがあるんだろうと思うんですね。
ですので、これはそういうことになるのかどうかも含めて、私たち国民もしっかりと議論に目を向けさせていただきたいと思うんです。ビジョン懇の議事録、これは竹中大臣が設置している私的懇談会なるものに共通しているんですけれども、議事録が完全には公開されていないわけなんです。議事要旨という形だけになっておりまして、これだけの大改革、本当に大きな改革だと思います。これはぜひ公開をしていただきたいと思いますが、座長のお取り計らいについて伺います。
■大田参考人
公開の方向につきましては、随分私も悩みました。一方で、自由な議論をしたいということもありまして公開しておりませんけれども、そのかわりに、終わりましてから記者にはなるべく詳細な御報告をしておりますし、それから資料は全部公開しております。
今、議事要旨だけですけれども、議事録もしっかりといずれ公開していくことが必要と考えております。
■西村(智)委員
いずれというのはいつでしょうか。
そしてまた、新型交付税のシミュレーション、面積と人口でこのくらいの比率にしたらこれだけになりますというシミュレーションを、やはり提案をしている以上はきちんとやって、それをしっかりと出す、それで、全国的な、国民的な議論、自治体の関係者の皆さんを巻き込んでの議論にしていくべきだというふうに思いますけれども、その議事録の公開はいつになるんでしょうか。
■大田参考人
議事録の公開は早くやるべきだと考えております。
それから、シミュレーションですけれども、おっしゃるように当然必要ですので、制度設計をしっかりとしていく中で、あわせてシミュレーションをやっていくべきだと考えております。
■西村(智)委員
新型交付税は、竹中大臣が経済財政諮問会議に提出した資料ですと、19年度予算から導入をしたいということになっております。19年度から導入と書いてあります。そのほかに、再生型破綻法制も今秋までに制度の概要を作成して公表する、不交付団体の拡大についても19年度予算においてやる、地方債の自由化についても初年度にふさわしい措置をする、こういうふうに書いてあるわけです。
これは、本来やはり新しい分権の一括法と一体でやっていかないと絶対にうまくいかないと私は思います。絶対にという言葉は余り使いたくありませんけれども、やはり分権一括法とセットで、あるいはそれが先行する形で、先ほど福田委員が言われた仕事の仕分けの話もそうです。現場の人たちがきちんと入って、自治事務の中にも、自治事務でなくて法定受託事務に切りかえていいものも恐らく出てくるんだろうと思いますし、そういったことも含めて、これは、この分権改革工程表でいくと、恐らく自治体にとってはかなりのハードランディングになるんだろう。そうなったら一体だれが責任をとるのかということは、本当に背筋の寒くなる思いがいたします。
分権一括法の時期について伺いたいと思います。
分権改革工程表では、「中期 3年程度で実現」という項目に、2年程度で結論を出して3年以内に提出と書いてありますけれども、一番最近のビジョン懇の議事要旨を見ますと3年ではできないという意見も出ているんですね。
どうですか、この時期、このタイミングについて。
■大田参考人
そのような議論も出ましたが、一方で、その道筋をつけていく、分権一括法ですべてを決めるのではなくて、分権一括法は自治事務を条例で決める枠組みをつくっていくという法律ですので、それはそれで決めて、なるべくその方向に進めていくということが必要だという議論も出ております。
前、分権一括法を決めたときの議論が4年間です。新分権一括法も、そのときよりは地方分権も成熟してきておりますので、できれば3年ということを考えております。
■西村(智)委員
時間ですので終わります。ありがとうございました。