■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美でございます。
新潟市民、県民は、この拉致問題の解決まで、この問題の存在は一日たりとも忘れることなく、最後まで頑張りたい、その決意でおります。
横田早紀江さんがアメリカで下院の公聴会で証言をされたということも大変大きなニュースでございました。非常に議員の皆さんの心を打った、そんな演説であったとお聞きをしております。
ぜひとも、政府関係者の皆さんにはその心情を受けとめていただいて、引き続き一歩も引かない強い姿勢でこの問題の解決に当たっていただきたい、そのことを強く心から要望いたします。
そこで、私は今回、この通常国会でのこの委員会での質問、三回目になりますけれども、前回、時間切れになりまして、麻生外務大臣との議論が途中になっておりました。
私は、日中、日韓、やはりトップ同士の関係をしっかりと構築する中でこの問題解決に向けての構図をつくり上げていく、そのことが大切なのではないかと申し上げたんですけれども、外務大臣は、この問題に関する限りは共通して頑張っておりますと、そんなにトップ同士の話が拉致問題の解決を妨げているということにはならないんだというふうに御答弁をされたかと思っております。
確かに、いろいろな事実を拾い集めてみますと、人権担当大使、設置をしていただきました。韓国にも訪問してくださっていたり、あるいは小泉総理がタイの首相と、あるいはロシアのプーチン大統領と拉致問題について議論をしたりというようなことがあるわけでありますけれども、私は、やはり依然として、トップ同士の関係が良好であれば、拉致問題の解決に向けてさらに力強いタッグが組んでいける、このように信じているものでございます。
さて、先般、谷内外務次官が日中外務事務次官会談に臨まれました。このとき、出発する間際に発言されたのを私も聞いておりましたけれども、対話をもっといろいろなレベルでやっていく必要があると思っているし、そういう意味では外務大臣の会談も重要だというふうに語っておられたかと思います。
懸案事項を協議するために今月末の外相会談の実現を働きかけるというふうに言っておられたわけでありますけれども、外務大臣、事務次官がそういうふうに発言されていること、承知をされていると思いますけれども、外務大臣会談が実現される見通しはございますでしょうか。
■麻生太郎外務大臣
日中の外務次官におきます日中総合政策対話、第5回というのが、去る7日から9日にかけて、戴秉国外交部次長の生まれ故郷である貴州省で開催をされております。
そのときの中の会話の一端として、日中双方で外相会談というものの可能性を探求しようじゃないかという話になったということで、具体的な日程調整に入ることになったというところが今の段階でありまして、今後、具体的な議題等々をこれから詰めていくことになろうと思いますが、拉致問題はその中の大きな議題の一つになろうと存じます。
■西村(智)委員
次に質問しようと思っていたこともあわせて御答弁いただきました。ありがとうございます。
ぜひ会談の実現に向けてやっていただきたい。この中で拉致問題もしっかりと議論ができるように、外務大臣としてもそういうお気持ちであるということは今理解できましたので、よろしくお願いをいたしたいと思います。
さて、そういたしますと、どうでしょうか、外務大臣、この外相会談で拉致問題を話し合うことは大臣御自身も大事なことだというふうにお感じになっておられるかと思います。前回の私の質問で、トップ同士の関係が足を引っ張っていることはない、そういう認識を大臣は答弁されたわけですけれども、そういたしますと、やはり関係が良好な中で拉致問題解決に向けて力を合わせていきたい、そういうふうにやっていけるというふうに大臣は今の認識としてお持ちだというふうに考えてよろしいんでしょうか。
■麻生大臣
関係が良好であった方がやりやすいのではないかと言われたいんですか。ちょっとおっしゃりたい意味の要点がよくわからなかったんですが、関係が良好な方が話がしやすい、それはそうですよ。良好な方が話がしやすいのは、それは普通の話なんであって、ただ、良好じゃない場合でもやっていかないかぬところが難しいのが外交だと存じます。
■西村(智)委員
続いて、アメリカとの関係について伺っていきたいと思います。
今回、横田早紀江さんがアメリカの議院で証言をされたことは、大変強いメッセージを世界に発しました。
ただ、アメリカの政府自体は、私が承知しておる限り、拉致問題について本格的な対応を検討してきたことはなかったのではないかと承知をしております。これから実質的な連携策を日本とアメリカとの間で見出していけるかどうかが大きなかぎであるという指摘があるわけでありますけれども、これは官房長官にお伺いをいたしたいと思います。通告はしておりませんが、ぜひ御答弁をいただきたいと思います。
安倍官房長官、横田御夫妻と面会されたときに、世界じゅうに強いメッセージを発したというふうに発言されたそうですけれども、今後このメッセージをどういうふうに次のステップにつなげていくか、そのことが重要であるというふうに考えております。そのための戦略をどのように描いていらっしゃるのでしょうか。これは官房長官に伺います。
■麻生大臣
先ほど御質問の中で、日米が協力してこの問題を包括的に解決していこう、そういう連携がとれていなかったのではないかという御指摘もございましたが、それは全く違うんだろうというふうに私は思うわけでございます。
総理が初めて訪朝した後、この拉致問題がいかに重要な問題であり深刻な問題であるかということを米側に私どもも説明し、アメリカ側も十分に理解をしたわけでございまして、その結果、クロフォードの首脳会談において、ブッシュ大統領から、北朝鮮によって拉致をされた方々が一人残らずその行方がわかるまで日本の立場を完全に支持する、ここまで言い切った首脳というのはブッシュ大統領ただ一人だろうというふうに思うわけであります。
その後、日米は連携をしながら、対話と圧力によって解決をしていくということでも一致をしているわけでございまして、まさにそういう意味におきましては、日米はこの拉致問題について一緒に解決をしていくということでは完全に歩調をそろえていると言ってもいいのではないか。
また、この拉致問題が解決をしなければ米朝間の問題もすべて解決をしたことにはならないともはっきり言っているわけでありますので、そのことも申し述べておきたい、こう思うわけでございます。
そこで、今回、その文脈の中で、横田早紀江さん初め被害者の御家族の方々等がブッシュ大統領と面会をし、また下院の公聴会でも証言をしたわけでございますが、このメッセージは広く世界に伝わったというふうに思っているわけであります。
国連の場におきまして人権理事会もつくられ、日本もその理事国となったわけでございまして、国連の場におきましても、早速この拉致問題について取り上げ、しっかりと北朝鮮に対して強い決議なりメッセージを発していく、そして国際社会において、北朝鮮にこの問題を解決しなければならないという包囲網をさらに構築していかなければいけない、このように考えています。
■西村(智)委員
その意気込みは大変結構だというふうに思いますけれども、私が伺いたいのは、では具体的にどうするのかということでございます。
5月1日に2プラス2で共同声明が採択されました。北朝鮮によるすべての不法な活動や拡散の活動を中止することをその共同声明の中では要求しておりますけれども、どういうことの活動の中止を求めているのかというような具体的な中身の記述はございません。
また、5月の3日には、麻生大臣、ライス国務長官とお会いになったそうで、イランや北朝鮮の核開発阻止へ国際社会の結束を強める方針を確認し合った、そして横田さんがブッシュ大統領と会ったことにも謝意を表明されたという報道でございますけれども、具体的に、ではどうするのかということが見えてこないわけでございます。
外務大臣、今後、何をアメリカ政府に対してどういうふうに働きかけていかれるのでしょうか。6月には日米首脳会談も予定をされておりますけれども、そこに向けての具体的な内容についてもあわせて伺います。
■麻生大臣
相手のある話ですから、どれが最も効果的かというのは、なかなかこちら側からではわからないところだと思います。
拉致という単語が、アブダクションというんですけれども、これが国連で正式に採択された例は過去1回もありません。これは日本の物すごい外交努力の成果です。ほとんど評価されませんでしたけれども、国際的には、アブダクションという言葉が正式に国連総会に残ったというのは初めてのことであります。これも大きな圧力の一つだと存じます。テレビにブッシュ大統領が横田早紀江さんと並んで出たのも大きな圧力になったことも確かだと思います。
いずれの場合も、北朝鮮側からの反応は、翌日出てくる反応が今日に至るまでゼロというのは、明らかにその効果が大きかったということを証左していると私どもはそう思っております。
経済制裁等々いろいろあろうとは思いますけれども、私どもとしては、少なくとも、そこに人質という形になっていて、拉致された方々は生きているという現実で対応しております。亡くなっているという前提で対応しているわけではありませんので、拉致されている方々が生きたまま帰還されるということが、私どもにとっては置かれている非常に大きな命題でありますから、私どものやれる程度というのはおのずとある程度限定されているということも理解をしていただかないといかぬところだと思います。
■西村(智)委員
官房長官にお伺いをいたしたいと思います。
6月に予定されております日米首脳会談、総理はどのように臨んでいかれるのでしょうか。
■安倍晋三内閣官房長官
どのようにというのは、拉致問題についてですか。拉致問題については、まずサミットの場でしっかりと取り上げていきたいというふうに考えているわけでございまして、そのために今、議長国であるロシアにも働きかけを行っているわけでありますが、サミットの場で取り上げるに際しまして、当然、米国の協力も必要となってくるわけでございます。
そうしたことも含めまして、しっかりと日米同盟のきずなを確認することによって、こうした拉致問題についても、しっかりと両国で、お互いに同じ認識を持って前進をさせていく、少しでも、一歩でも二歩でも前に進めていくために協力をしていくということが大切ではないか、そのことを日米の首脳会談の場において、さらにこれは同盟を進化させていくということが必要ではないか、私はこう思っているわけでございます。
また、北朝鮮の行っているさまざまな不法な活動につきましては、日米では常に情報の交換を行いながら協力をしているということも申し添えておきたいと思います。
■西村(智)委員
引き続き官房長官にお伺いしたいと思うんですけれども、ほかの国からの拉致被害者も大勢おられるわけでございます。横田めぐみさんの夫とされる方が韓国人の男性である可能性が極めて高いということがDNA鑑定の結果明らかにされました。ぜひ日韓で足並みをそろえてこの問題に取り組んでいけないかというふうに考えているところでございます。
韓国政府も拉致問題については取り上げてくれるようになってきておりますし、4月の21日から開催されておりました南北の閣僚級会談では、韓国の統一相が、北朝鮮による韓国人拉致を取り上げて、問題解決に進展があれば経済協力の意向を示すなどという演説を行っております。
また、横田めぐみさんの夫である可能性が高まっている韓国人男性の問題についてもその南北閣僚級会談の中で議論が行われて、北朝鮮側が調査中であるというふうに答えた、そのような報道もあるわけでありまして、これはもうかなり動きの出ていることだというふうに思っております。
金大中前大統領が北朝鮮を6月に訪問する予定もおありでありますし、韓国の盧武鉉大統領も南北の首脳会談には前向きな意向であるということでございますが、こういう状況の中で、日本政府といたしまして、ほかの国の政府と、とりわけ韓国政府とはもっと連携を図って拉致問題の解決に向けて進んでいくべきではないかというふうに思いますが、官房長官に伺います。
■安倍内閣官房長
今委員がお話をされた南北での拉致問題についての話し合いでございますが、韓国の有力紙は、政府にもう少ししっかりとした態度でこの問題を取り上げるべきであるというふうに論評していたと承知をしているわけでございますが、これは、韓国が置かれている立場、日本が置かれている立場、それぞれ違うわけでございます。
完全にこの問題で一致をするということについてはなかなか難しい課題もあるわけでございますし、今委員が御指摘をされたように、この問題を解決すればさらに援助をするというアプローチを韓国がとっているわけでありますが、我が国は違うわけであります。かつては日本もそういうアプローチをとった結果、なかなか成果が出なかったのが現実でございます。私も、この問題、10年来かかわっているわけでありますが、その中で、現在、我々は対話と圧力という姿勢で対応しているということでございます。
大切なことは、まずしっかりとお互いが持っている情報を共有すること、そして認識を一つにすることが大切ではないかというふうに思うわけでありまして、アプローチにつきましては、これは、それぞれの国の事情もあるということもお互いに理解する必要はあるのではないかとも思うわけでありますが、そういう意味におきまして、現在、日韓関係におきまして情報をお互いに共有するという努力をしているところであります。
■西村(智)委員
先ほど北橋委員の質問の中にもありましたように、また松原委員の指摘にもありましたように、私も、どうもこの間、拉致問題に関する総理御自身の姿勢がいささか消極的になっているのではないかというふうに思うものでございます。
実際、拉致問題解決について、4月の18日ですが、みずからの任期中にこだわらず、できるだけ早い方がいいというふうにお述べになった。つまり、任期中の解決には必ずしもこだわっていないという意向を示されたようでございます。また、次の訪朝のことは今検討していないというようなことでございますし、被害者の御家族の皆さんに会ったのはもう2年前ですか、総理が2度目の訪朝を行った後の面会が最後であると思っております。
総理が突破口を開いてくれた拉致問題の解決に向けての道であるからこそ、やはり私は、ここはもう一つ総理の積極的な解決に向けての行動、これが必要ではないかというふうに思いますけれども、官房長官、どうでしょうか。総理の拉致問題解決に向けた姿勢、これをどのようにごらんになっているか、そしてまた、今後総理に何か進言される御予定はあるか、任期中にもう一度御家族の方々とお会いになる予定はおありかどうか、伺いたいと思います。
■安倍内閣官房長官
私は、むしろ北朝鮮にとってこそ、小泉総理の任期中にこの問題を解決して、日朝国交正常化をして、国を立て直していく、そのチャンスがこの任期中にあるんだろう、北朝鮮こそそう考えるべきではないだろうか、こう思うわけでございます。
我々も、一日も早くこの問題を解決しなければならない、こう考えているわけでございますが、しかし、この問題の解決というのは、すべての拉致被害者が帰国をするということでございまして、それ以外に私たちは一切妥協するという考え方はないわけでございまして、すべての拉致被害者の帰国をもってこの問題は解決をするわけでございます。
総理が訪朝することによってすべての拉致被害者が帰国するのであれば、当然、それは総理も直ちに訪朝を考えるんだろう、こう思うわけでありますが、なかなか、北朝鮮は、現段階ではそのように政策を思い切って変えていくという決断をしていないわけでございます。
ですから、私どもは、先ほども御答弁をいたしましたように、この問題について、やはりこの問題を解決しなければ北朝鮮が抱えている問題を解決できない、この問題を解決すれば日朝国交正常化も果たすことができるし、国際社会からも受け入れられ、北朝鮮はしっかりと国民に対しても食料が供給でき、経済を立て直し、立派な国になっていく、そういう道を歩むことができるわけでございますが、その判断を促すように我々も対話と圧力の姿勢で今後とも臨んでいきたい、こう考えているわけであります。
■西村(智)委員
総理の姿勢が今はっきり見えているかどうかということを、ぜひこれは客観的にも見ていただきたいと思います。私たちの立場からいたしますと、やはり総理は少し、この問題、積極性に欠けるのではないかと私は思っております。
そこは、官房長官としての安倍官房長官の政治決断もまた私たちは見ていかなければいけないというふうに思いますし、引き続き、積極的に、力強く、引かない姿勢で問題解決に向けて取り組んでくださること、これは強く要望いたしまして、時間になりましたので、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。