■西村智奈美委員
おはようございます。民主党の西村智奈美と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
きょうは、いわゆる市場化テスト法案について質問をさせていただきます。
官から民へと言われてまいりました。ただやみくもに官から民へ流せばいいというふうには、恐らくどなたもお考えになっていないのではないかと思います。民間に任せるときに、きちんと国の責務として一定の質の確保を図る、先進国諸国がやってまいりました失敗を教訓にして、日本でどうそれをつくっていくか、それが問われることだと思っております。
さて、今回の市場化テスト法案、公共サービス改革法案と恐らく政府の方はおっしゃるんだと思いますけれども、非常に中身がわかりにくい。これは恐らく多くの方が指摘されていることではないかと思います。この法律が成立した後で内閣がその基本方針をつくる、それに沿った形で各省庁で実施要項をつくるということなんですけれども、これはどうなっていくのかわからないということで、私たちの目からいたしますと非常にこの先がどうなるのか見通せない、そんな法律案であると思っております。 ところで、質問ですけれども、この市場化テスト法の対象には、既に幾つかのものをそのテストの対象とするというふうに決まっております。実施要項や基本方針が決まっていないのに対象業務が先に決まってくるというのは、これはちょっとおかしな話ではないかというふうには思いますが、伺いたいのは、統計調査業務がこの対象に含まれていることについてでございます。
そもそも、この対象業務の決定はどういう判断基準で行ってこられたのでしょうか。
■中馬弘毅行政改革・規制改革担当大臣
公共サービス改革法案が名称でございますが、市場化テストと略称しておりますから、それを使ってもらって結構でございます。
ともかく、今回の、今の御質問にございましたこれらの統計業務を初めとした、これをどうして選んだかということでございますが、そのほかにも、この法律が成立、施行されますと、ハローワーク関連事業、社会保険関連業務、統計調査関連業務等について官民競争入札等を実施することを予定しております。
これらの業務につきましては、国民のため、より良質かつ低廉な公共サービスを実現するという観点から、これは、民間業者からこういったことができるじゃないかといった提案がありまして、この提案を踏まえまして、テスト的な意味も含めまして始めたこともございます。そして、関係省庁との協議を行った上で、民間の創意工夫の活用等により、効率的、効果的な業務の実施が可能となるものであることから、官民競争入札等の実施を予定しているものでございます。
■西村(智)委員
民間業者からの要望、提案を踏まえてということですけれども、この統計調査業務について、民間業者からの提案はありましたか。
■中馬大臣
どの業者からということではなくて、既にそうした実施を民間的にやっておられることから、これは私たちでもできるんじゃないかといった声があったようでございます。それをこうしてテストの形で、まずは対象に挙げさせていただいております。
■西村(智)委員
民間業者からの提案があって統計調査業務を市場化テストの対象業務に加えたという今の大臣の御答弁でございました。これは記録に残りますので、しっかりと私の方も記憶にとどめてまいりたいと考えております。私が承知しております限り、統計調査業務がこの市場化テストの対象業務に含まれたというのは、むしろ省庁の方からの要請が非常に強かったというふうに承知をしております。
この後質問いたしますけれども、そもそも統計調査業務は、個人情報を扱う非常にデリケートな業務でございます。個人情報を扱うということから、民間事業者には非常に厳格なコンプライアンスが求められてくると思いますし、また非常に多くの人員を動かさなければいけませんので、このことについて民間業者が積極的に手を挙げるのだろうか、そのことについては私はちょっと疑問を持っているわけでございます。
それでは引き続いて伺いますけれども、秘密保持義務ですね。法案の25条では、公共サービス実施民間事業者、その他ございますが、「知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。」などなどと書かれております。そもそも市場化されたときに、守秘義務、秘密保持義務と言ってもいいと思いますが、それはどのように課せられるのでしょうか。昨年度、モデル事業で行われた国民年金の収納事業では、事業者、受託者に守秘義務は課しているんですけれども、そこで働いている一人一人の個々の労働者に守秘義務が課されているという仕組みにはなっておりません。そこのところを踏まえてお答えいただきたいと思います。
また、法案の中を見ますと、秘密保持義務の規定が適用される範囲として、公共サービス実施民間事業者、その職員等々が含まれると想定されるというふうに書いてありますが、秘密保持義務をどのように課されていくつもりなのか、伺います。
■中馬大臣
この法案の第25条第1項におきまして秘密保持義務規定を置いておりまして、これによりまして、民間事業者が公共サービスの実施に関して知り得た秘密の漏示または盗用、これを禁止しております。あわせて、本法案では、民間事業者が公共サービスの実施に関して知り得た秘密を漏らし、または盗用した場合の罰則規定、これも置いております。こうした措置によりまして、個人情報その他の秘密を保護することとしている次第です。
■西村(智)委員
今のお答えの中でも、事業者のもとで働く一人一人に、個々にきちんと守秘義務が課せられるのかということについては明確な御答弁がなかったと私は理解をいたします。
既に官公庁などで相談業務を行っている、行おうとしている事業者が、そこで働く人たちを募集したりしておるわけでございます。今手元に、「年金相談のお仕事」「官公庁での電話応対スタッフ」という見出しで募集をかけているチラシがこのようにあるわけですけれども、ここでは、守秘義務が課せられますというようなことは書いてございません。これは、きっちり採用のときから周知なりしていく必要があるのではないかというふうに思いますが、この点についてはもう一点あわせて、重ねて伺いたいことがありますけれども、つまり、受託者に責任を課すということでよろしいんでしょうか。派遣労働者あるいはそこで従事している労働者の方々にも守秘義務が課せられるというふうに私は当然なってくるんだろうというふうに思いますけれども、基本方針や実施要項にはそういった点は書き込まれないのでしょうか。
■河幹夫政府参考人(内閣府市場化テスト推進室長)
先ほどの大臣の答弁に尽きるわけでございますけれども、正確に、今回提出させていただいております公共サービス改革法案の第25条そのものを読ませていただきますと、「公共サービス実施民間事業者若しくはその職員その他の前条の公共サービスに従事する者又はこれらの者であった者は、当該公共サービスの実施に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。」という条文を25条で用意させていただいておりまして、今先生の御質問の件でいいますと、そこに従事する職員もこの秘密保持義務を法律上、課せられている形になっておりますし、また、先ほどの大臣が御説明させていただきました罰則規定も、当然、これに違反した場合には罰則がかかるということで、まさに公法上そういう規定が設けられているということでございます。
先ほど委員がおっしゃった部分は、契約上これまでやってきた、委託契約の中でやってきた部分がございますけれども、この法律ができて、こういう形で行われるものについては、この法律上、義務が課せられるという形にさせていただいているところでございます。
■西村(智)委員
それで、国勢調査を含む統計調査業務もこの市場化テストの対象に含まれるということなんですけれども、統計局の方からも来ていただいていると思いますが、国勢調査、どのくらいの予算で、それから、全国で多くの調査員の方々から従事していただいて行っていると思いますけれども、その規模について教えてください。
■衞藤英達政府参考人(総務省統計局長)
御説明いたします。
昨年10月1日現在で実施しました平成17年国勢調査の予算額は約650億円、また、調査票を世帯に配付、回収等の事務を行いました調査員の数は全国で約85万人ということでございます。
■西村(智)委員
中馬大臣、650億で85万人の調査員の方々が実施した昨年の国勢調査でございます。これで本当に民間業者からやってみたいなどという声が上がるのでしょうか。私は、これは今、国勢調査のあり方そのものを含めて、有識者会議でしたか、今3回まで会議を重ねて検討中だというふうに伺っております。これから次の本格的な国勢調査、4年後に実施をされるわけでございます。簡易国勢調査で昨年は項目も少なかったわけなんですけれども、多くの調査票が回収されずに、また、にせ調査員を名乗って個人情報を引き出そうというやからが出てきたりしまして、非常にいろいろな問題が発生いたしました。こういった業務を本当に民間開放できるとお考えでしょうか。
この後、仮にこれが成立いたしますと、基本方針をつくって、各省庁で実施要項まで策定することになるわけでございます。しかし、民間開放する見込みがない業務を市場化テストの対象にして、そのことから発生する業務量の増加、これは率直に言って税金の無駄遣いにつながるのではないかと私は考えております。どうですか、1社も手が挙がらなかったときのことをぜひ想像していただきたいと思います。いかがですか。
■中馬大臣
国勢調査だけでなくて、いろいろな工業統計調査その他、全国規模でやっているものはたくさんあります。
こうした統計調査の民間開放につきましては、その弊害の可能性や防止の措置を検討するための試験調査を平成18年度中に実施することといたしております。こうした取り組みを通じまして、総務省など関係省庁と連携しつつ、どのような形、全国一律なのか、御承知のように、こうした国勢調査などは各府県ごとにそれぞれ委任事務のような形でやっていますが、そういう形で地域を限ってやるのか、そうしたことも含めて官民競争入札の可能性といいましょうか、どうして実施すべきかについて具体的な検討を進めてまいる所存でございます。
■西村(智)委員
いや、その具体的な検討を進めてまいるの前に、例えば統計調査業務、国勢調査が一番大きいわけですけれども、本当にこれで、民間事業者が参入してみたい、そういう民間事業者が出てくるというふうに、では大臣はお考えなわけですね。
■中馬大臣
今言いましたように、全国で全部任せてみろという事業者なのか、地域で限定した形でおやりになるのか、業者の方も、また業者でない方もいらっしゃいましょうけれども、これを引き受けてみようというところは、私は、いろいろな方法をまた考えてこられるんじゃないかと思います。
■西村(智)委員
そういう民間事業者というのは一体どういう民間事業者か、私はぜひ出会ってみたいと思います。
この市場化テスト法案の提出に当たっては、恐らく各先進国で既に行われているこれまでの経験をベースにされていると思いますけれども、それでは、統計調査業務を市場化テストを行っている、市場化しているという国はございますか。
■山口泰明内閣府副大臣
お答えしたいと思います。
今御指摘の諸外国にあってはどうかということでございますけれども、国勢調査が民間委託されているかどうかについては把握をしておりませんけれども、統計調査を民間にゆだねている例はございます。
一つは、米国で、森林統計のデータ収集を、過去、政府職員のみならず大学や民間企業などの非政府団体によって行っておりまして、今後も質を維持しつつ最も効率的な担い手として選択をしていくと聞いております。
また、もう一つは、オーストラリアで、青少年の教育、仕事、生活等についての電話による聞き取り調査を民間委託すべく現在入札をしている。
さらに必要に応じて諸外国の事例を参考にして検討してまいりたいと思っております。
■西村(智)委員
副大臣、御答弁中に、あれ、ちょっとこれは国勢調査とは規模が違うのではないかというふうにお感じになったのではありませんか。どのくらいの規模でそれは行われているものか、把握されていられますか。
■伊吹文明委員長
山口内閣府副大臣、答弁をしながら考えたことを答えてください。
■山口副大臣
米国の農務省森林局、これは、草原や都市部の樹木の本数の把握、そして調査対象は、48州及びアラスカ、ハワイ、プエルトリコ、米国が領有する太平洋の島々のすべての森林ということに聞いております。
また、今入札をやっているオーストラリアでありますけれども、このタイトルは、2006年から2008年のオーストラリアの青少年に関する長期調査のためのデータ収集。この概要については、毎年多数の青少年に関する教育、訓練、仕事、社会生活に関するデータを収集する、2005年度からは、3つの異なる年齢層から1万8,000人のデータを収集して、データ収集と分析から構成される。この調査の受託者は、正確で時宜を得たデータの収集を行い、分析担当者にそれを提供することが求められる、受託者には高い回答率、90%以上達成すること、高い水準のデータを収集すること、抽出したサンプルを長期にわたって維持することが求められるとあります。調査対象は4つの異なる年齢層、15歳から25歳の青少年、 06年が約1万3,330人、07年が2万 3,330人、08年が1万9,830人と聞いております。
以上でございます。
■西村(智)委員
アラスカの森林の調査が統計調査業務とおっしゃる、その御答弁をこの場でされたというその神経が私はちょっと理解できないわけでございます。
1万8,000千人ですとか1万3,000人、これは日本全国でやる国勢調査と全く規模が違うじゃないですか。それを、あたかもほかの国でも統計調査業務はやっていますということで出してこられるというのは、これはいかがな了見でなされたのか、本当に私は憤っております。これはぜひ考え直していただきたい。
これは、市場化テストの対象とすることで既に業務量は発生するわけでございます。実施要項を策定しなければいけない、これは膨大な量ですよ。今、統計局が、有識者の方々から集まっていただいて、どういうあり方で4年後やろうかということで議論している最中でもございますし、大きな問題がある、このまま国勢調査を対象業務にするなどといったら、それこそ、この市場化テスト法案というのは一体何なのか、その本質を疑われるというふうに思いますし、そこのところはぜひ改めていただきたい、私はこのように思っております。
時間がなくなってまいりました。二点目の質問に移ります。
この市場化テスト法案、質の維持というのは常々言われておるところでありますけれども、一方で、政府がこの間、男女共同参画が21世紀の我が国の最重要課題である、男女共同参画基本法に高らかに掲げて取り組んでこられた経緯がございます。
ところで、今、国家公務員で女性がいわゆる指導的地位に占める比率というのは、どうも依然として低いようでございます。任用者、新たに採用される女性の割合も、1種でいいますと7.7%というふうに非常に低いわけでありますし、また、これが指導的地位、いわゆる管理職というところで占める割合でいいますと非常に低くなっているわけでございます。数字はちょっと細かくなりますので、また大変恥ずかしくなるような数字でございますので申し上げませんけれども、もう既に、ナイロビ宣言の要請から、行政における指導的地位で女性が占める比率は30%であるべしということで、これは国際的な要請としてあるわけですが、依然として我が国においては達成にはまだ道が遠いという感がいたしております。
人事院にお伺いいたします。
女性の公務員、指導的地位に占める女性の比率をふやすためにいろいろな取り組みをされてきたと承知をしておりますけれども、その内容と効果について、できれば簡潔にお答えください。
■伊吹文明委員長
人事院鈴木人材局長、簡潔に答えてください。
■鈴木明裕人政府参考人(事院事務総局人材局長)
お答えいたします。
人事院は、公務における男女共同参画の実現のために、女性国家公務員の採用、登用の拡大を図っていくことが大変重要だと認識しておりまして、このために、平成13年に「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」というものを策定いたしまして、各省庁にお示しして、各府省はこれに基づきまして女性職員の採用・登用拡大計画を策定して、全府省が一体となって取り組んできているということでございます。さらに、昨年12月にはこの指針を改定して、計画年度を5年間延長しているという状況でございます。
それによりまして、役付の方に占める女性の割合で見てみますと、係長級で見てみますと、平成11年度が……(西村(智)委員「そこまではいいです」と呼ぶ)よろしいですか。着実に少しずつ進んでおるということで御理解いただきたいと思います。
■西村(智)委員
それで、男女共同参画基本計画が、これは昨年末に改定されて、第2次基本計画が出てまいりました。
ここで、項目の1として「政策・方針決定過程への女性の参画の拡大」ということで非常に高らかな目標が掲げられておるわけでございますけれども、ここに「国が率先して、あらゆる分野における政策・方針決定過程への女性の参画の促進について取組を進める必要がある。」ですとか、民間に先行して政府が積極的に女性の登用等に取り組むとともにという記述ですとかがあるわけです。
「国が率先して、」「民間に先行して」、こういうふうに書いてあるわけなんですけれども、なぜ、国が率先して、民間に先行してこういった指導的地位における女性の占める比率を上昇させる、拡大させる、そういう取り組みを行う必要があるんでしょうか。
■猪口 邦子少子化・男女共同参画担当大臣
お答え申し上げます。
男女共同参画社会の形成に当たりましては、女性のさまざまな方針決定への参画が重要であるわけですけれども、実際には、諸外国と比べて、我が国のそのような状況が不十分であると考えております。そのような状況の中で、やはり国は率先垂範して、新たなる目標を掲げ、男女共同参画社会形成の観点から女性の活躍の領域を拡大していく必要があると考えております。先生御指摘のとおり、第2次男女共同参画基本計画におきまして、2020.30と呼んでおります、2020年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%になるよう取り組むというような方向性を打ち出しております。
民主主義社会におきまして、構成員の意思を公正に反映できる参画の制度の運用が必要であると考えております。そのような中で、活力ある経済あるいは社会を創造していくためにも、幅広い議論を行い、新たな発想を取り入れ、多様な視点を導入していくことが必要であり、そういう観点からも、女性の方針決定、政策決定への参画は重要であると思います。ですから、国として率先垂範するという決意でございますので、よろしくお願いいたします。
■西村(智)委員
少し飛ばします。
自治体で、1999年に地方自治法施行令が改正されて、総合評価方式というのが導入されました。つまり、入札して業者を決定するときに価格以外の要素をそこに加味することができる、こういうふうにしたところでございまして、自治体によっては、事業者の男女共同参画度、これを価格以外の要素として報告を求めるとか、入札のときにそういった調査項目を一つつけるとか、そういうようなことをやっている自治体もあるというふうに聞いております。私はこれは非常に注目をしてまいりました、残念ながらまだ広がってきていないようではありますけれども。
大臣、市場化テストの導入で、ぜひこういったことを考えられないでしょうか。つまり、21世紀の最重要課題であると基本法にうたわれているこの男女共同参画、今ほど猪口大臣からの御答弁にもありましたように、これからの経済社会を考えていく上で、また少子化社会への対応ということを考えても、男性も女性も、ともに働きやすい職場、そして仕事と生活のバランスのとれた働き方ができる、そういうワークルール、これを確立するために、この市場化テストの導入に際しまして、価格以外の項目として、こういったことをぜひ基本方針に盛り込んでいただきたいと思いますが、いかがですか。仮にこういう基本方針をつくるときにですね。
■中馬大臣
政府の審議会のメンバー等につきましては、もうこのごろははっきりと3分の1以上加えることといったことを、これはみずから官がやることでございますが、こうして民間に委託する場合には、そこを強制的に、それを条件にするのは、と思います。
しかし、今委員おっしゃいますように、目的はやはりこうした業務の内容でございますから、そうしたこととあわせて、それ以外の入札参加資格評価等におきまして、これもひとつ慎重に検討されるべき項目であるとは思います。
■西村(智)委員
私にとっては不満足な答弁でございましたけれども、時間ですので、質問を終わります。
ありがとうございました。