■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美でございます。
きょうは、NHKの新年度予算に関連して質問をさせていただきます。
私は、昨年もこのNHKの予算案の質問に立たせていただきまして、そのときに発言したことの中から、放送ガイドラインを新たに策定してそれを公表するといったことを取り上げていただくことができました。これは、本当にNHK全体で意識改革をしていこう、そういう気持ち、姿勢が形にあらわれたことだというふうに評価させていただいております。また、本当にこの間、経営委員会の中身などについても私たちは知ることができなかったわけですけれども、これも議事録などが公開されるようになりましたことは、視聴者全体にとって、こういう方針でNHKはやっていこうとしているんだということが非常に見えやすくなった。これについても私は高く評価をさせていただいているところでございます。
そこで、放送ガイドラインの新たな策定と公表に当たっては、ぜひ、さらなるNHKの意識改革を促すようなものであっていただきたいというふうに思っております。お伺いしたところですと、今月末をめどに策定を行いまして、今月中には公表されるということでございますけれども、策定作業の中に、実際にこれからガイドラインを使うという人たちが参加して、そして、これは本当に自分たちでつくったガイドラインであるという意識を持っていただくことによって、さらなるその意味というのは深まるのではないか、こういうふうに思っておりますけれども、現在の策定作業の状況について伺いたいと思っております。
あわせて、私がこの中でぜひ明記していただきたいのは、放送と政治との距離、これをいかにとるのかということでございます。放送法第3条、ここの中に大原則は書いてあるわけでございますけれども、実際に個別具体のことになりますと、今まで倫理基準の中では明確な記載はございませんでした。これについて書きぶりがどのようになるのか、それについても伺いたいと思います。
■原田豊彦参考人(日本放送協会理事)
お答えいたします。
今月末に新しいガイドラインを公表すべく、今準備をしております。
これは、NHKの放送にかかわるすべての人たちが実際に取材に当たったり、あるいは番組制作に当たったりする上で判断の指針というものになります。この作成に当たりましては、本部のあらゆる部局それから全国のすべての放送局、多くの現場から意見あるいは要望を集めております。その上で事務局で素案をつくってまいりましたけれども、これも何度か素案の段階で現場にもまた打ち返して、フィードバックをし、さらに意見を聞くということを積み重ねてまいりました。そういう意味では、現場の意見は可能な限りこの新しいガイドラインに盛り込まれてきたというふうに考えております。
こうした作成過程そのものが、職員が新しいガイドラインを理解することにつながっていく、これを仕事の上でより生かしていくということにもつながっていくというふうにも思っておりますし、これが出ました後、しっかりと現場にこの新しいガイドラインが根づきますように、私どもも努めてまいりたいというふうに思います。
それから、新しいガイドラインは、私どもの大原則であります放送の自主自律の堅持、このことは第1章にきっちりと盛り込んでおります。NHKは報道機関として不偏不党の立場を守って番組編集の自由を確保すること、そして、何人からも干渉されず、放送の自主自律を堅持するんだということを記述してございます。
それから、平成18年度から20年度の経営計画、1月に発表いたしましたけれども、あの中でも、例えば放送に直接関係のないNHKの予算あるいは事業計画の国会承認を得るに当たっても、全役職員は、放送の自主自律の堅持が信頼される公共放送の生命線であるとの認識に基づき業務に当たるということを記述しております。新しいガイドラインでもこうした内容を盛り込もうということでございます。
いずれにしても、すべての職員がガイドライン、大原則を胸に刻んであらゆる業務に当たるということが私は大事かというふうに考えております。
■西村(智)委員
放送法第16条及び放送法第37条でございますけれども、この規定がある限り、NHKと国会との関係、NHKと政治との関係というのは、これは切っても切れないわけでございます。今、私たち民主党の中でも、この規定について考え直したらどうかというような議論をやっておるところでございますけれども、この法律条文がある限りは、やはりそこはNHKの姿勢として明確にきっちりと分離する、つまり、不偏不党を貫き、放送の編集権はきっちりと独立を守るという姿勢を今この段階では示していただかないと、やはり本当の意味での信頼回復にはつながっていかないのではないかと私は考えております。
今おっしゃった、私も今繰り返し申し上げた不偏不党、自主自律、これはいわば大原則、精神論と言ってもいいようなものでございます。このガイドラインというのは、それをさらに具体的にどうするのかということを記述する、いわば具体論を記載するものだというふうに私は認識しているんですけれども、どうでしょうか、そのことについてさらに、例えば、政治家とかかわるようなときに、きっちりと、例えば予算案、事業案、こういったものについて説明するときには報告を義務づけるなどのルール化、これをされるおつもりはないか、さらに伺いたいと思います。
そして、あわせて伺いたいのは、このガイドラインを何冊くらい作成されるのでしょうか。現場で実際に制作に当たられる方が持たれるのは当然だというふうに思いますけれども、私は、これを、新たに時代が変わるごとに視聴者全体含めて見直していくという必要性があると思いますので、例えば番組モニターの方々などにも持っていただく、こういうことが必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
■原田参考人
お答えいたします。
いずれにせよ、あらゆる業務において、すべての役職員は、放送の自主自律の堅持が信頼される公共放送の生命線であるという認識、それが一番肝要なことである、そのことを刻み込むことが大事であるというふうに私は考えております。
それから、ガイドラインでございますけれども、今のところ、2万部程度印刷をしようとしておりますけれども、あわせて、今月末ぎりぎりになるかと思いますが、NHKのホームページでも公開をいたします。それから、御希望があれば、実費程度をいただきまして冊子をお分けするということも検討をしております。
■西村(智)委員
何もおっしゃらないうちにいずれにせよと言われるのはいかがなものかというふうに思います。2つの事柄を述べて、あるいは2つ以上の事柄を述べていずれにせよとおっしゃるのが日本語ではないかと思いますので、ぜひお願いいたします。
続きまして、国際放送について伺ってまいりたいと思います。
ここのところ、随分活発な発言が続いておりまして、今まで委員の中からも何人かの方が質問をされました。ことし、予算案、収支計画、事業計画に対して総務大臣から付された意見で、今回、国際放送のところが新たにつけ加わった部分があるということでございます。具体的に「下記の点に配意すべきである。」そういう項目の中で、7番目でございますけれども、下の2行がことし新しく加わった部分だそうでございます。それは、総務大臣、よろしいですね。7をちょっと読み上げさせていただきます。「また、我が国からの海外への情報発信を一層充実させる観点から、時代の変化に応じた新しい国際放送の在り方について、検討を行うこと。」このように新しくことし、初めてここの部分が、意見が付されたということでございます。
まず、NHK、日本放送協会の方に先にお伺いいたしたいと思います。このように意見が出されておりますけれども、どんなふうに対応していかれますか。
■橋本元一参考人(日本放送協会会長)
NHKは、具体的に3カ年計画の中で、やはり国際放送強化ということを大事に考えておりまして、日本から発信する情報を各国の国民の方々が受け入れやすい環境をつくるということで、現在考えている計画案をお示ししておりますのが、20年度までに放送の内容を充実するとともに英語化率を100%に持っていきたい、こういうことによって強化を図ってまいりたいという計画案をお示ししてございます。
■西村(智)委員
NHKの中には国際放送を審議する、国際放送審議会でしたでしょうか、ちょっと正確には名称を申し上げることができませんけれども、そのような審議会も設置されておりますし、国際放送の毎年毎年の基本計画、こういったものも策定されているということでございますので、そういったところを含めても対応されていかれるのかなというふうに思います。
ところで、通信・放送の在り方に関する懇談会、竹中大臣の私的懇談会だということでございますけれども、ブリーフを拝見いたしますと、どうもこちらの方でも国際放送のあり方ということについて検討しておるようなんですね。既に第1回から第6回まで開催をされておりますけれども、ブリーフされた、記者会見された記録を拝見いたしますと、少なくとも第2回会合と第5回会合、この中でNHKの国際放送のあり方について議論された形跡があるようなんです。
NHKの方に確認で伺います。既にこのように竹中大臣の私的懇談会で国際放送のあり方を検討されているようなんですが、それでもNHKとしては、総務大臣がことしの予算に付した意見に基づいて国際放送のあり方を検討していくということでよろしいですね。
■橋本参考人
現在御審議いただいています18年度の予算、事業計画でありますが、我々、3カ年、18年度から20年度の計画を示してございます。この中で、3カ年の計画としましては、先ほど申し上げました内容を充実しつつ、英語化率を100%に20年度までにする、この具体的な計画を御審議いただいているというふうなことでございます。
■西村(智)委員
NHKの方はNHKで、英語化率100%を目指しつつ検討していくというようなことなどなど、議論されておるということでございます。
そこで、竹中大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、大臣は、NHKの収支計画、予算に関して付した意見の中で、繰り返しませんけれども、このように書いておられるわけでございますけれども、これは総務大臣の御意見ということでよろしいですよね。そこを確認させていただきます。
■竹中平蔵総務大臣
大臣意見としてそのようにつけ加えております。
新たにつけ加わったのかというお尋ねも先ほどございましたので、そのとおりでございます。
■西村(智)委員
それで、この通信・放送の在り方に関する懇談会でございますけれども、これは竹中総務大臣の私的な懇談会として設置されておるということでございます。いわば竹中大臣の私的な懇談会でございますので大臣の意向で議題は選択されていく、こういうことになるんだろうと承知をしておりますけれども、NHKの方に検討しなさい、国際放送のあり方について検討せよと言いつつ、こちらの私的懇談会の方でも議題としてNHKの国際放送のあり方について議論を行っている。私には、こういうことがいかがなものかというふうに思えるわけでございます。
この私的懇談会は「国民の視点から見た通信・放送の問題点」などを検討するというふうに書いてあるわけでございますけれども、大臣、私は、NHKがこのように大臣の意見に基づいて独自に国際放送のあり方を検討するというふうに発言されておられるわけですから、新たに懇談会の方に国際放送のあり方を議論していただくというのはちょっと失礼な話ではないか、これは懇談会の方に失礼な話ではないか、このように思うんですが、いかがですか。
■竹中大臣
西村委員、それは私はそのようには思っていないわけでございます。
私のもとにある懇談会というのは、通信と放送の技術面での融合という大変新しい、デジタルな時代において通信と放送はどのようにあるべきか、放送の公共性はどうあるべきか、そして国としての情報発信はどうあるべきかという非常に大きな枠組みの議論をさせていただくわけです。一方で、今NHKは現に国際放送の業務をしておられるわけで、それを執行する側として、今の執行体制の中で当然しっかりとやっていただかなきゃいけないこともあるし、今執行している側から見てこういう問題点がまだあるというような、私たちにはなかなか見えない問題点もあるわけです。私は、こういう問題というのは非常に重層的に幅広く議論するところに意味があるんだと思っております。
例が少し違うかもしれませんけれども、国と地方のあり方についても、これは総務省の側から見た議論もしますけれども地方の側から見た議論もしてください、そして議論を深める部分は深めましょうと。私はそういうやり方をとっておりますので、例えばですが、NHKに検討してくださいというふうに言っておいて、こっそりと私たちで何か決めていたら、これはちょっと失礼かもしれませんが、私たちがこういう議論をしているということはNHKさんも御存じでございますので、ぜひお互いにいい議論をしたいと思っております。
■西村(智)委員
いい議論をしていく、そしていい方向を見つけ出していくために重層的な議論を行っていくということは、これは私も全くそのとおりであるというふうに思います。であればこそ、ぜひ、この通信・放送の在り方に関する懇談会を公開ということにしていただけないか。
大臣は、この私的懇談会を非公開とする、公開しないと、第1回の会合の後の記者会見、ブリーフでおっしゃっておられます。どうも、確かに第1回から第4回、5回までは非公開だったようなんですけれども、第6回及びこれから行われる第7回、こちらの方は、外部からヒアリングをするということで、公開される。しかもブロードバンドで映像までお流しになるということなんですけれども、公開、非公開としたその判断基準を伺いたいと思います。
先ほどおっしゃった、いい議論をしていく、いい方向を見つけていく、これはやはりみんなで議論していくのが大前提だと私も思います。ですので、それはぜひ見えるようにしていただきたい。公開していただくということについては、どんなふうにお考えですか。
■竹中大臣
私は、やはり議論というのはできる限り公開するというのが基本的な方向であろうというふうに思っております。
ただ、経済財政諮問会議の場合もそうでございますけれども、いろいろな問題について率直に意見交換するような場合には、むしろ内部でしっかりと議論していただいて、結論についてしっかりとその情報を公開していくというやり方の方がよい場合もあるというのは、私は事実だと思います。
通信・放送の懇談会に関しましても、会議そのものについては、いわゆる部屋の中でやらせていただきますけれども、その後、必ず、直後に記者会見でブリーフをして、そして議事要旨を数日後だったと思いますけれども公開をして、その形での情報公開はきちっと行っている。何度も言いますが、経済財政諮問会議のやり方と同じようなやり方をしているわけでございます。
その上で、では、どうしてヒアリングについてそういうふうに公開したのかということなのでございますけれども、実はこれは、今この問題にはいろいろな立場の方がかかわっていて、いろいろな立場についてわかりやすく見えるような場という意味で、これを公開してもらえないかという非常に強い要望がありました。私は、これは、率直な、ああでもないこうでもない、こういう考えはあるかどうかという試行錯誤的な意見交換の場ではなくて、きちっとお互いの立場を言う場であるから、これはオープンにさせていただいてよいのではないかというふうに判断をしたわけです。
実は、これも、政策金融機関に関する改革で諮問会議が行った手法と同じなんです。政策金融改革についても、これはいいか悪いか、いろいろな率直な意見交換の段階でそれが外に出てしまうとかえって誤解を招くということで、諮問会議の方式でやらせていただきましたが、ヒアリングに関してはこれはオープンでやらせていただきました。
そういう位置づけであるということを御理解賜りたいと思います。
■西村(智)委員
経済財政諮問会議も同様な形で行われたということ、率直な意見交換を保障するというような、実は全く同じことを昨晩質問取りに来られた総務省の役所の方がおっしゃっておられました。全く大臣と同じことをおっしゃっておられました。
ですけれども、通信・放送の在り方に関する懇談会の開催要綱、検討内容の目的に「国民の視点から見た」というふうに書いてあるわけです、「国民の視点から見た」と。本当にそこに国民の視点が反映されているのかどうか。これは国民は知る権利があるというふうに思います。ぜひそこのところは改めて検討していただきたいと思います。
ちょっと時間がなくなってまいりましたので、最後の質問に移ります。
国際放送といいますと、どうも日本人の発想は、海外で放映するテレビ、ラジオ、こういうことにすぐ結びつきがちなんですけれども、それは言ってみればグローバル化する中でごく自然なことではあるわけですけれども、足元を見てみると、実は私たちが暮らしているこの国内社会も随分国際化しているんじゃないのというふうに私は考えております。
ここのところ、在留外国人の数が急激にふえておりまして、今、総人口に占める在留外国人の人口比率は1.55%でございます。観光立国などといううたい文句で観光政策も一生懸命やっていることの反映でしょう、観光客もビジネス関連の方々もふえてまいりました。こういうふうに、実は今もう既に日本の社会の中が多様化している。こういうことを踏まえて、これは少し理念的になるかもしれませんけれども、そういったことを前提とした国際放送のあり方、つまり、多様化する、国際化している国内社会を見据えた中での国際放送のあり方、これはぜひ検討していただきたい、このように思いますが、橋本会長、いかがですか。
■橋本参考人
これは、海外に発信するというよりも、国内向けのいわゆる国際放送ということでございますよね。これにつきましては、やはりこういうふうな現状の日本のありようを考えて、国際化に対応した番組編成というものは考える必要が出てこようかと思いますし、実際、我々、今行っていますのは、テレビの番組なんかでも、日本語の音声チャンネルと英語の音声チャンネル、こういうふうなものを組み合わせて行うとかいうことはやっております。それから、ラジオなんかでも、一部ポルトガル語とか、こういうふうな言葉で発信するというふうなこともやっております。
そういうふうな通常の、現在では大変限られた手法でございますが、こういうことをやっていきたいと思いますし、それから、デジタル化の世界になりまして、デジタルチャンネルというふうなことになれば、またそういうふうな技術を用いた副音声といいますか、外国語音声をやったり、字幕をつけるとかいうことは相当可能になってくるんじゃなかろうかというふうに考えております。
■西村(智)委員
時間ですので、終わります。
ありがとうございました。