■西村智奈美分科員
民主党の西村智奈美でございます。
与謝野大臣、そして、きょうは厚労省の方から西川政務官にもお越しいただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
先ほど、中根委員の質問の中で、規制というような言葉が繰り返し出てまいりました。この間、日本では規制改革というものが行われてきたというふうに承知をしております。
規制は、私はこれは基本的な考え方だと思っておりますけれども、必要な規制は強化をしなければいけない、ですが、不必要でしかもそれが有害な規制であるときには、それを見直したり撤廃していったりすることが必要だと考えております。
こういった中で、政府の方は、この間、小さな政府を目指すということで、どちらかといいますと官から私企業へいろんな形で規制を緩和している、なくしているように見えるわけでございますけれども、私は、規制を考えるときに何をもって規制を見るかという視点、これはぜひエンドユーザーサイドに立って規制を見るということを行っていきたいというふうに考えています。
つまり、規制といいますと、どうしても政府の方から見て都合のよいように規制をつくる、あるいは業者を管理監督しやすいように規制をつくる、こういう発想になりがちなんですけれども、しかし、今そういうことではもうやっていけない。つまり、縦割り行政の中での弊害というものも出てきているわけでございますし、最終消費者の側から見て、この規制は必要なのか必要でないのか、あるいはどういう規制が必要なのか、こういうことを発想していくことが大切なんだろうというふうに思っております。
こういう私の考えを最初に述べさせていただいて、きょうは保険業法の件について伺っていきたいというふうに思います。
昨年、保険業法は改正施行をされました。保険業法の改正によりまして、根拠法のない共済が今度は少額短期保険業者というふうになるわけでございますけれども、そもそも根拠法のない共済のどういった点が問題で、どういった必要性から先般の法改正をするに至ったのか、この点から伺いたいと思います。
■三國谷勝範政府参考人(金融庁総務企画局長)
お答え申し上げます。
近年、特別な根拠法に基づかずに設立されました任意団体等で行われます共済事業、いわゆる根拠法のない共済、この規模や形態の多様化が進みまして、特定の者を相手方として保険の引き受けを行う共済事業と、不特定の者を相手方として保険の引き受けを行う保険業とを区別することがだんだん容易でなくなりつつあった現象がございます。
また、近年、共済に関しましては、事業者が所在不明である、あるいはマルチ商法的な勧誘方法が用いられているなど、国民生活センター等への相談件数が増加してきたところでございます。
ちなみに、共済に関します相談件数は、国民生活センター調べでございますが、平成10年度が363件に対しまして、平成15年度866件、うちマルチに係る相談が、平成10年度4件、平成15年度121件という状態でふえてきているところでございます。
こうした状況を踏まえまして、今般の保険業法改正におきましては、保険業法の適用範囲につきまして、契約の相手方が特定か不特定か、あるいは営利か非営利かといったことにかかわらず、およそ保険の引き受けを行う者につきましては、その契約者を保護し、健全な運営を確保するために、必要な規制の対象とすることとしたものでございます。
■西村(智)分科員
今回の改正で営利か非営利かを問わず規制の対象にするということになったという御説明なんですけれども、私はいささかそのあたりに疑問を持つところでございます。
今回、少額短期保険業者、新たに設置をされたわけですけれども、これに適用除外が設けられておりまして、保険業法施行令の第1条の3というところでございますが、そこにるる書かれているわけでございます。
「保険業の定義から除かれるもの」、つまり今回の改正の適用には当たらないものというふうにいろいろ書かれているわけでございますけれども、この適用除外を決めたときの判断基準が、高度の自治性やあるいは構成員が真に限定されていること、こういったことが要件として満たされているときに適用除外になるというふうに聞いているんですけれども、具体的にはどういう考え方でこの線引きを行ったのでしょうか。
■三國谷参考人
「保険業の定義から除かれるもの」、保険業法の適用除外につきましては、構成員の自治のみによる監督を理由に自己責任を問うことが可能であることが、法令上、社会通念上明らかである団体を例外的に適用除外としているところでございます。
具体的には、1つは、共済を運営している団体が高い自治性を有していること。これは、逆に言いますと、万一の破綻の際にも処理を自治にゆだねることが適当と認められること、基本的には同一法人などの極めて同質性が高い団体ということでございます。
2つ目は、団体の位置づけ、外延が既存の法制度上明確であること。これは、保険業法の適用除外に該当するか否かは、いろいろ刑事罰との問題にも直結した問題でございますので、その辺を明確にすることとの要件を満たすものとしているところでございます。
■西村(智)分科員
私は、この法律改正が行われたのは、先ほど御指摘がありましたように、国民生活センターの方に無認可共済に関する相談件数がふえてきたこと、この中でも特にマルチに関する相談件数が急増してきたということでございますので、やはり契約者の権利の保護、権利の擁護、これが最終的な目的なんだというふうに理解をいたします。ですので、契約者保護という観点に立ったときに、この適用除外に関する要件というのはやはり余りにもわかりにくくて、かつ不公平と言わなければいけない部分があるのではないかというふうに考えております。
無認可共済といいましても、悪い事業者、先ほど挙がったような、相談の対象になったような悪い事業者、これがたくさんあるということは事実だというふうに私も思います。ですけれども、非営利で、ボランティアで、本当に契約者のためにやっている、そういう無認可共済もあるというふうに思うんですけれども、この法改正あるいは政省令の改正に当たって、それら共済にどのように内容を周知して、また意見聴取をどういうふうに行ったのか、その点についてお聞かせください。
■三國谷参考人
金融庁といたしましては、1つは総務省の実態調査、これは平成16年10月に行っておりますが、この実態調査あるいはインターネットなどによりまして共済を行っている団体を把握し、また金融審議会などにおいてヒアリングを行うとともに、審議会の論点整理のパブリックコメントを募集するなど、法案作成に当たりまして実態把握及び意見聴取に努めてきたところでございます。
また、昨年5月の法案成立後でございますが、説明会や政省令案の公表、またパブリックコメントの募集などによりまして、根拠法のない共済の実態把握及び意見聴取に努めまして、政省令案の策定に反映するべく努めてきたところでございます。この過程におきましては、さまざまな団体から面談などを通じまして、いろいろ継続的に御意見や御要望を伺ったりもしているところでございます。
今後とも、そういった団体が新制度へ円滑に移行し、契約者保護等が図られますよう、それぞれの事情をよく伺いながら、引き続き相談に乗ってまいりたいと考えているところでございます。
■西村(智)分科員
問題は、先ほど御答弁いただいた中の、円滑な移行が実際に図られていないということを指摘したいわけでございます。
意見聴取の過程でも、金融庁の方ではそれなりに御配慮もされたのかというふうに思いますけれども、実際には、本当にこの保険業法の今回の改正で共済制度そのものに激変を強いられる団体が、実はヒアリングの対象になっていなかったり、法改正が施行された、公表されたその後でこの内容を知って、本当にもう自分たちの持っている共済制度、これをどうしようかということで頭を抱えておられる方々が本当にたくさんいらっしゃるわけでございます。
なぜ私がこのようなことを申し上げているかと申しますと、実は知的障害者の皆さんが自主的につくっている共済制度があるそうでございますけれども、これが今回、法改正によって少額短期事業者の枠内に入らなければならないということになります。非常に大きな衝撃がそういった関係者の方々にあったようでございまして、そして私のところにもお話をいただきました。
次の問いは、知的障害者の保険加入についてお伺いしたいと思うんですけれども、知的障害者の皆さん、民間の医療保険には加入できないというようなお話を聞いております。これについて金融庁の見解を伺いたいと思います。
■佐藤隆文政府参考人(金融庁監督局長)
まず初めに、全般的な枠組みについてお話をさせていただきます。
保険会社がどのような商品を提供し、どのような引き受けを行うかということにつきましては、各社が保険数理に基づく合理性が存在するということを前提といたしまして、それぞれ経営の健全性を確保しつつ、利用者のニーズに合わせた商品の提供を行うということが重要であると思っております。その際、一般的に、医師による診療、治療、投薬を受けたことなどの告知事由に該当する場合には、いわゆる逆選択を排除し、保険契約者間の公平性を確保する、こういう観点から、保険会社は加入できる保険種類あるいは保険引受金額を制限するといったいわゆる危険選択を行う場合がございます。
他方、保険契約の内容に関しまして、あるいは引き受けに際しまして、合理的な理由なく特定の者に対して不当な差別的取り扱いをすることは認められないということになっております。
そこで、御指摘の点でございますけれども、限られた時間ではございましたけれども、幾つかの保険会社にヒアリングを行ってみました。その範囲でお答えをさせていただきますと、告知書にはさまざまな疾患が記載されておりまして、これらに該当することによって結果的に引き受けが制限されるケースというのはあり得ると思われますけれども、専ら知的障害者であることのみをもって、これを理由に医療保険への加入を排除している、こういった商品はないものと承知をいたしております。
それから、このほかに例えばいわゆる無選択型の医療保険という商品もございまして、医師の診査や告知書の提出を行うことなく加入できるものがございます。こうした商品について言えば、例えば年齢制限等の他の引き受け条件を満たしていれば加入が可能であるというふうに承知をいたしております。
いずれにいたしましても、当局といたしましては、仮に引き受けに当たり保険事業としての合理性なく特定の者に対して不当な差別的取り扱いが行われているような事態が判明すれば、適切な問題意識を持って対応していくことが必要であろうかというふうに思っております。
■西村(智)分科員
短い時間ではありましたけれども、事業者の方にヒアリングを行ってくださったということで、そのことについてはお礼を申し上げたいと思いますけれども、伺っておりますと、専ら知的障害者だからといって加入を阻むような商品はないけれども、告知書にある記載が現実的には加入できないような仕組みになっているということですね、恐らく。そういうことなんだと私は思います。
そういうことになりますと、もし差別的な扱いがあるようであれば今後適切に対応していくということでございますけれども、そのことについてはぜひ金融庁の方でも検討いただきたいというふうに思います。
今回、障害者自立支援法がいよいよスタートすることになりまして、応益負担という考え方で、今後障害者の皆さんの負担が恐らく増してくることは明白であろうというふうに考えております。
西川政務官、負担は実際にこれから恐らくふえていくということになると思われますけれども、知的障害者の方々が入院されたときのことをぜひ想像していただきたいというふうに思います。大体、入院した場合には、多くの場合、付添人が必要だというふうに私は伺っております。付添人が必要であるということは、差額ベッド代もこれまた必要になってくるということでございますけれども、今後、この障害者差別の解消に向けた取り組み、もしできましたら、この保険業法とのかかわりでお答えをいただけると幸いでございます。
■西川京子厚生労働大臣政務官
日ごろから西村議員の障害者に対する御活動、敬意を表したいと思います。
先般の障害者自立支援法、障害者の方々の負担がふえるというお話がありましたが、これはやはり、制度全体を持続可能な制度にするため、そういう思いの中で、もちろん負担のふえる部分もありますが、また減る方もいらっしゃいます。そういう意味での大きな枠の中での制度改正だということをぜひ御理解いただきたいと思います。
その中で、今回、知的障害者の民間保険の問題の、今まできちんとした根拠法がなかったということで、新しく制度化された中で、どうしてもその制度の中になかなか入れないという問題の御質問かなと思います。
いわば互助会制度で、いわゆる知的障害者の方が入院した際に入院給付金その他をお互いに給付するための共済を営んでいらっしゃる、そういう互助会制度だと思いますが、これは、実は今回、やはり入る方の権利をきちんと守る、そういうスタンスでの制度改正だと私も思いますので、これは厚労省の立場で言うあれではないのかもしれませんが、ぜひ、できましたら、入る方向で御検討いただきたい。入っている団体もいらっしゃるというふうには聞いております。
その中で、障害者の方が差別のない社会を目指すということ、これはもう私ども厚生労働省としては本当に一番大切な理念だと思っておりますので、社会のあらゆる分野で、障害者の方あるいは健常者も、お互いに尊敬し合い、尊重し合いながら活動できる方向で厚労省が努力していく、そのことは間違いのない事実でございまして、障害者の基本法にも、障害があるということで差別をされないということをしっかりとうたっているところでございますので、厚労省も、今後、先生のおっしゃる方向で、一緒に努力していくことを申し上げたいと思います。
■西村(智)分科員
御承知だと思いますけれども、無認可共済の中で少額短期事業者に移行するというふうに言っているところもあるやに伺っております。しかし、私の地元では、2月、真冬の寒い時期、本当に新潟市は海に近くて雪が横から降ってくるような天気になりますけれども、その中で互助会の皆さんが街頭署名活動をされて、今回こちらの方にもその署名を持って、いわば適用除外にしてほしいという要請をされたと伺っております。聞くところですと、約30万人の署名を集めて持ってこられたということでございます。これは、1人1人の利用者の立場に立ってみれば、この30万人の署名の重みというのは極めて重いのではないか、これはぜひ御理解いただきたいというふうに思います。
ちょっと技術的なところに入りますけれども、共済事業者、今回、法改正によりまして9月30日までに届け出を行う必要があるということでございます。そして、2年以内に新制度への移行をする必要があるということでございますけれども、仮にの場合を想定して、2つお聞かせください。もし、9月30日までに、10月1日になっても届け出を行っていないという場合にはどういうことになるのでしょうか。また、仮に9月30日までに届け出た場合でも、2年以内に少額短期保険業者の登録をしなかった場合にはどうなるのでしょうか。
■三國谷参考人
まず、制度の御説明をさせていただきたいと存じます。
改正保険業法では、施行は本年4月1日を予定しておりますが、その際、現に共済事業を行っている者につきましては必要な経過措置を置いており、1つは、共済事業者が引き続き共済事業を行う場合には施行日から6カ月以内に行政庁へ届け出を行う必要がございます。これに違反した場合は罰則の適用ということになります。
2つ目は、また、共済事業を行っている者は施行日から2年以内に少額短期保険業者の登録または保険会社の免許の申請を行う必要がございます。これに違反した場合の罰則規定もあるわけでございますが、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、さまざまな団体が新制度へ円滑に移行し、契約者保護等が図られますよう、それぞれの事情をよく伺いながら、引き続き相談に乗ってまいりたいと考えているところでございます。
■西村(智)分科員
円滑な移行ということで2回同じフレーズをお聞きしましたので、あえてそれでは質問させていただきますけれども、今、現状、円滑な移行というのは行われていないというふうに認識されているかと思います。それでは、こういうふうになってしまっている現状は何が原因だったのでしょうか。制度設計が問題だったのでしょうか。それとも、制度の設計をしていく過程で十分にヒアリングをしてこなかったということが問題なのでしょうか。それとも、制度は問題ないけれども、既存事業者の方に問題があるんだということなんでしょうか。どうでしょうか。
■三國谷参考人
いずれにいたしましても、私どもといたしましては、今回、少額短期保険事業、現在のいわゆる根拠法のない共済、これによりますいろいろな事態というものを適正化していくとともに、その過程におきましては、さまざまな団体がございますが、それぞれの団体が実情に応じまして円滑に移行できるよう、所要の経過措置等を含めながら、それから、いろいろなヒアリングも繰り返しながら、いろいろな条件等も説明しながらこの移行に努めているということを御理解いただきたいと存じます。
■西村(智)分科員
大臣の御見解をここで伺いたいと思います。
知的障害者の互助会の皆さんが本当に大規模な署名活動をされまして、今回の保険業法の適用除外としてほしいというふうに要求されておられるわけですが、金融大臣としてどのような御見解でしょうか。
■与謝野馨金融担当大臣
これは党の方からも相当強く言われまして、何とかできないかということを随分考えましたし、また全国でこういうことをボランティアでやっておられる方々の代表にもお目にかかりまして、こういう方々まで法の網をかぶせなきゃいけないというのは心苦しいなというのが私の本当の気持ちでございます。
しかしながら、一方では、不測の事態に備えていろいろなことをきちんと準備しておくということもまた金融庁の立場でございまして、私としては、何とか、移行するときに、事務的な負担その他の負担がなるべく少なくて済むような方法で移行できる方法はないかということを今考えている最中でございます。まだ結論は出ておりませんけれども、本当に、ボランティアで、また善意を持ってやってきた方々の立場をきちんと我々は考えなければならない、そのように思っております。
■西村(智)分科員
移行に伴う負担もさることながら、課税対象に新たになるということがやはり大きな問題なんだろうというふうに思います。ぜひ大臣、そこも含めてお考えいただきたい。ただいまいただいた答弁は非常に気持ちのこもった、前向きな御答弁だったというふうに思っておりますので、ぜひ、これを形にあらわすような方向でお取り組みを進めていただきたいと思います。
最後に、1点だけ確認をさせていただきたいと思います。
保険募集人についてでございますが、少額短期保険業者になった場合に、今度は保険募集人も置かなければいけないということになりますけれども、実はテキストも私お借りをしてきました。やはり、勉強すれば保険募集人になることができるという程度かというふうに思いますけれども、最後に確認させていただきたいのは、この保険募集人の人数を、例えば最低何人置くというような形で、その規模に応じて特段の定めなどをするつもりがおありかどうか、そこをお聞かせください。
■三國谷参考人
委託する保険募集人の人数を含めまして少額短期保険業者がどのような募集体制で保険業を行うかということにつきましては、基本的には経営判断の問題のところがございます。また、取り扱う保険商品によっても変わり得るものでありますことから、一概に必要な保険募集人の人数を申し上げることは困難であることを御理解いただきたいと存じます。
■西村(智)分科員
定めをしないかということをお伺いしたんですが、それはどうですか。
■三國谷参考人
人数を規則として決めるというようなことは考えておりません。
■西村(智)分科員
時間ですので終わります。
ありがとうございました。