■西村智奈美委員
民主党の西村智奈美でございます。
前通常国会、NHKの予算審議に引き続いて、きょうは、決算と、そして先ほど御説明をいただきました新生プランについてお伺いをしたいと思っております。
私は新潟県第一区選出でございまして、新潟県中越地震がいよいよ十月二十三日に一周年を迎えることになります。「にんげんドキュメント」を初めとして、二十三日当日の夜は「NHKスペシャル」で、今被災地の皆さんがどんなふうにお暮らしになっていらっしゃるのか、そして中山間地での被災というその特性から、今どんな課題があるのかということについて、災害を風化させないために、本当に公共放送の役割が大変大きいということをまたこの番組を通じて感じさせていただいたところでございますし、この間のお取り組みに心から敬意を表したいと思います。
ところで、先ほど御説明いただいた新生プランでありますけれども、三本の柱がございましたが、果たしてこれで何をNHKがされようとしているのか、正直なところ、私にはよく見えてまいりません。
この一番目、NHKだからできる放送を追求する、二番目、組織や業務の大幅な改革、三番目は受信料の公平負担に全力で取り組むということなんですけれども、やはり何か欠けているものがどうもあるような気がしてならないわけでございます。
まず一点、橋本会長にお伺いをいたしたいのは、先ほど説明の文章の中に、読み上げていただいた「「NHK新生プラン」と財政の現状について」というものでございますが、二ページ目、後ろから二行でこういうふうに書かれております。「しかし、「新生プラン」を公表して以来、受信料の支払い拒否・保留の増加は、だいぶ少なくなっております。」こういうふうに書かれておりますが、橋本会長は、この新生プランのどこに視聴者の皆さんが関心を持って、理解を示して、そしてNHKが本当に生まれ変わったということを受けとめた上で、こういう効果が、つまり保留件数の増加が少なくなってきているという効果が生み出されているとお考えなのか。その点についてお伺いをしたいと思います。
〔岡本(芳)委員長代理退席、委員長着席〕
■橋本元一参考人(日本放送協会会長)
日ごろ、NHKが視聴者・国民の方々の生活、安心、安全を守るという活動にまず御評価いただきまして、ありがとうございます。
それから、この新生プランのところの内容でございます。新生プランを出したのが九月二十日という時点でございますけれども、その時点に至るまで、NHKは大変、回復に向けての、受信料収納にかかわる回復努力ということを積み重ねてまいりました。結果的に、この新生プランだけの効果でこういうものが回復したということではなく、やはり基本的には、受信料回復という、昨年夏から以降、特にことしの春以降、大変積極的にこの活動を続けてまいりましたけれども、そういう効果が徐々にですけれども上がってきたというふうに考えております。
■西村(智)委員
でも、こちらには「「新生プラン」を公表して以来、」というふうに書かれておりますので、普通に読めば、新生プランの効果で支払い拒否と保留の増加が少なくなってきたというふうに読まなければいけないんだと思いますけれども。
時間もございませんので、率直に申し上げさせていただければ、やはり簡易裁判所を通じての督促、これを行うということがこういったことにつながってきているのではないかというふうに見ざるを得ないのではないかと思います。しかし、本当にそういったことをこの時期にこの新生プランの中で打ち出すことが適当だったのかどうか、その辺の御認識をお伺いしたいんです。
デジタル時代のNHK懇談会、これは四回既に開催されておるそうでございまして、議事録がすべて公開をされております。まず、そのことには心から敬意を表したい、評価をさせていただきたいと思います。
この第三回の議事録の配付資料で、「受信料支払い拒否・保留の理由の変化」ということで、支払い拒否と保留の理由が変化してきているということについて述べておるんですけれども、この中で、「最近は「隣りが払っていない」などの「不公平感・制度批判」が増えている」ということがタイトルとして出ております。
ところが、この数字が一体本当にどうなっているか。確かに、「不公平感・制度批判など」ということが理由であると答える方々は、ことしの二月から三月までよりも五月から七月までに一九%から三三%とふえております。ところが、これと並んで一番多い数字は「不祥事・経営陣への批判」、これが五月から七月の段階でも三四%、二月から三月の間では三五%ということで、むしろ私は、こちらの数字が余り変わっていないということの方に着目をすべきなのではないかというふうに考えます。
そこで、この理由の変化についてどういうふうに分析をしておられるのか。この八月三日の資料で示したような御認識から変わっていないのか。それとも、そうではないんです、私たちの考え方も変わりましたということであれば、「不祥事・経営陣への批判」がこれほどまでに大きく変わっていないということについてどんなふうに受けとめていらっしゃるのか。短くお答えをお願いします。
■小林良一参考人(日本放送協会理事)
今委員が御指摘されましたデジタル時代のNHK懇談会におきまして提出した資料に関しまして、基本的にその流れが変わっていることはございません。そういう認識でございます。
ただ、不祥事への批判が相変わらず多いことも現実でございまして、そのことは当然ながら重く受けとめながら、改革をスピーディーに実行していくといった、自己でできる努力を徹底していくということによりまして、視聴者の皆様にやはりNHKは変わったというふうに実感していただけるよう信頼を回復していかなきゃならないというふうに考えております。
■西村(智)委員
これはたびたびどの場面でも繰り返されていることでありますけれども、やはり公共放送の生命線は放送の自主自律であろうかと思います。ですので、編集権と経営権というのは明確に分離すべきである。これは私も三月のときの委員会からずっと申し上げてまいりましたけれども、改めて、お話を蒸し返すようで大変恐縮なんですけれども、確認を込めて、一点伺いたいことがございます。
さきのETVの問題で、NHKが東京高裁に陳述書を提出されておりますけれども、その中でこういう記述があるそうでございます。つまり、例年、NHKは、予算が国会に提出される前後の一月から二月、与野党の衆参議員のうち四百五十人の議員に対して、衆参合わせて四百五十人の議員に対して、予算案と事業計画について説明をしているということでありますけれども、審議する委員会は総務委員会でございます。ここに今、委員が四十人、参議院の方は恐らく二十人程度かと思いますけれども、合わせても数十人くらいしかおりません。四百五十人の議員に説明をするというのは余りに多くないでしょうか。来年のこの予算審議に当たって、何人くらいの議員の方に説明をされるおつもりでしょうか。
■中川潤一参考人(日本放送協会理事)
お答えします。
御承知のように、NHKは、放送法によりまして、予算は国会で承認を受けるということが一つのパブリックコントロールとして決まっておりまして、それに基づきまして、NHKは、その御理解を事前に賜るということで、できるだけ多くの国会議員の先生方に予算それから事業計画の内容を御理解賜るということをやってきております。
四百五十人という数、今御指摘いただきましたけれども、これは毎年、その都度、若干の変動はございますが、大体四百人から四百五十人ということです。
したがいまして、私どもは、このような活動を非常に重要なことだと思っておりますので、来年度の予算につきましても、またこのような活動をしたいというふうに考えております。
■西村(智)委員
来年度も四百五十人程度の議員の方々に事業計画と予算案を御説明されるというふうな御答弁だったと理解をさせていただきます。
では、放送直前の番組を事前に説明するということについてはいかがなんでしょうか。これはもうずっと確認をしてきたことですけれども、事前に番組の説明を政治家や議員に対してするのは通常業務の範囲であるというふうにはっきりおっしゃっておられました。これは三月、総務委員会で審議をしたときの旧役員の方の御認識でございましたけれども、新しい役員体制になられて、放送前の番組を事前に議員、あるいは政治家一般と呼んでもよろしいんですが、それらに対して説明することの必要性についてはいかがお考えですか。
■橋本参考人
放送の前に番組の内容を政治家の方々に説明する必要があるということは、全く考えておりません。
■西村(智)委員
ありがとうございます。必要性はないということでございますので、できればそれをきっちりと内外にわかる形でルールとしてつくっていただくことはできませんでしょうか。特に、このようにNHKに対する信頼が損なわれている時期でもございますし、つくった内容、つくられた番組の内容でもちろん私たちはNHKの姿勢について評価をさせていただきますけれども、このような不祥事が続いてきた、信頼が損なわれているというこの時期においては、もうワンステップ前に出て、番組制作の過程そのものもきちんと適切であったということを、内側にも外側にも、視聴者の皆さんにもきちんと見えるような形の方がよろしいのではないかと思うんです。
そこで、事前説明などのとき、あるいは政治家の皆さんへの説明に行くとき、これはルール化をしていただけないか。私は、前回は、事前説明に行くときにはきちんとそれを報告する、それをまた、こういうふうに報告しますよということを説明に伺う政治家の方にも伝える、そのことを御提案させていただきましたけれども、何もこのことにこだわっているわけではございません。中の事情に適切な、合った形でルールができればよろしいかと思いますけれども、それについてはいかがでしょうか。
■中川参考人
お答えいたします。
何らかのルールをということでございますけれども、まず、予算のあるいは事業計画の御説明に上がるとき、これは非常に多くの人間がやっているわけではございませんで、極めて限られた人間、ありていに言えば五つないし六つぐらいのグループに分けまして、大変先生方お忙しゅうございますから、アポイントを事前にとらせていただきますけれども、たびたびの変更がございましたり、あるいは延期になったりということがございます。そういう中で、できるだけ、先ほど申し上げましたように、限られた時間内で多くの方々に御説明する。またその際に、事業内容あるいは予算等につきましても、いろいろ資料請求とか個別の御要望がございます。そういったものに対しましても、私どもはできるだけその中身を正確に事前に御理解賜りたいということで、そういうことにもできるだけおこたえするということでやってまいっております。
したがいまして、この活動は、何かルールをもって一律に決めていくというよりも、一番大きなルールは、先生、釈迦に説法でございますけれども、何人からも干渉されず、放送においては自主自律を守るんだ、これが最大限のルールだと思いますので、それを守ってやっていきたいというふうに考えております。
■西村(智)委員
放送法第三条で、確かに、何人にも妨げられないと申しますか、規制されないということが書いてありますが、それは番組制作にかかわっている皆さんの内心の問題でありますよね。私たちがよりNHKの姿勢を信頼していくためには、そのプロセスをぜひ明確に見せていただきたい。皆さん方がやっておられるというのであれば、なおさらのこと、ルールをみんなで、こういうふうになっているんですよというふうに互いに見合って、適切にやっているんだったら邪魔にならないと思うんですけれども。
そういうことについてはどうですか、もう一度伺います。
■中川参考人
なかなか放送、例えば今度の「ETV2001」につきましては、通常、その編集過程というのはなかなか公表しない。これは編集の自由を守るためでございますけれども、あえて、いろいろな批判を受けております、あるいは誤解も受けておりますので、裁判所に提出する準備書面をそのままホームページに載せて御理解を図るということをやっております。
また、そういう放送のこととは違いまして、こういった経営面でのいろいろ御理解を賜るという活動そのものは、ルールとおっしゃいますけれども、これはなかなか、さまざま、どういう方とおつき合いして、どういう話をしているかということを一々記録に残すとか全部ルール化するということは不可能なことだと思いますので、そこは御理解賜りたいと思います。
■西村(智)委員
さまざまございますと御説明をいただきましたけれども、そのさまざまの中身がわからないので、お話は今聞きましたけれども、今の時点では私は理解できないということは申し上げておきます。
今回の新生プランの中で私が評価をさせていただきたい一点は、ガイドラインのことでございます。新しいガイドラインを作成してこれを公表するということでありますけれども、これは今までになかったものをつくるということなのでしょうか。あるいは、どのようなガイドラインをつくろうとしておられるのか。前にあったものをバージョンアップするというのであれば、前のものと何が違って、そしてまた、それを公表するということでございますけれども、公表するということによってどんな効果が生まれると期待されておられるのか、それを伺いたいと思います。
■原田豊彦参考人(日本放送協会理事)
今御質問にありましたように、NHKの場合、放送法であるとか、それから国内番組基準あるいは国際番組基準というものをつくりまして、自主的な判断で取材や番組制作に当たるということでございます。新しいガイドラインといいますものは、これらの基準に基づきまして、特に最近、個人情報保護など新しい動きもございますので、そうした新しい動きを取り込んで、NHKの放送に携わる者が取材や番組制作の上で判断の指針となる、そうしたものをつくろうということで今、作業を進めてございます。
視聴者の皆さんにNHKの放送の基本的な考え方あるいは仕事の進め方について理解を深めていただくということも期待をいたしまして、公開をするということでございます。
■西村(智)委員
私は、ガイドラインを公表する効果というのは、実は今期待していた御答弁は、それによっていわゆる内部の自主規律が高まるということであったんですけれども、その点についてはどうなんですか。視聴者の皆さんから御理解をいただくということだけがこの公表の理由であって、期待する効果であってよろしいんでしょうか。
■原田参考人
今回、新生プランの中でも、私どもは、自主自律でやっていくということを視聴者の皆さんに表明しております。これは、公共放送の基本的な原点としてそういうことをこの際きっちり改めて表明するということとあわせて、内部におりますNHKの職員がそのことの自覚をより一層高めるということをねらいとしております。
ガイドラインを公表するということも、もちろん今委員の御指摘のような、内部の人間がより公共放送にある者としての高い倫理観を持つ、そのことを期待しております。
■西村(智)委員
繰り返しになりますけれども、そのガイドラインなどに政治と放送とのかかわりについて何らかの進展が見られるような記載をぜひともお願いしたい。これはまた、後ほど機会がありましたときに質問させていただきたいと思いますけれども、このガイドラインの作成は、放送現場の倫理に関する委員会というところにおいて作成される、発行されるそうでございますけれども、ぜひこのプロセスについても視聴者の皆さんにわかりやすく公表などしていただいて、みんなでNHKに対する信頼を取り戻せるようにやっていっていただきたいことを御要望申し上げ、時間になりましたので、質問を終わります。
ありがとうございました。