■西村智奈美委員
民主党・無所属クラブの西村智奈美でございます。
きょうは、参考人の皆さん、御足労いただきましてありがとうございました。
まず最初に、石井参考人に確認という点でお伺いをしたいんですけれども、きょう、御丁寧に、参考人意見陳述参考資料ということで資料を出していただきました。ここにきちんと新聞社に掲載した記事のものであるというふうに記載をされておりますけれども、私も学生のときに聞いた話ですが、研究論文とか原稿を寄稿するときには、例えば前に書いたものを焼き直ししたり部分的に手直しして掲載するというときには、必ずそれを掲載しなさい、そのことを明記しなさいというふうに聞いたように記憶しております。それがいわゆる研究者としての最低限のマナーだというふうに聞いたんですけれども、そのことについて確認したいと思います。
■石井晴夫参考人(作新学院大学総合政策学部教授)
お配りしました資料は、この新聞社の了承を得ております。
■西村(智)委員
それでは、跡田参考人にお伺いをしたいんですけれども、私、実は、先週の金曜日にきょうの参考人質疑の参考人の方が決定をした後で、跡田参考人の最近お書きになったものを少し集めさせていただきました。
まず一つは、慶応大学ディスカッションペーパー、ナンバー〇五〇二、タイトルは「郵政民営化・政策金融改革による資金の流れの変化について」というものでございます。これがことしの五月の発行ということになっております。
もう一つが、「金融財政事情」の、これは二〇〇五年六月六日号ということになっておりますけれども、「郵政民営化・政策金融改革で資金循環はどう変わるのか」、こういうタイトルでございますけれども、これを実はじっくり私は読ませていただきました。
そして、非常に驚いたことに、このディスカッションペーパー、ことしの五月に出されたものと、六月六日の「金融財政事情」に掲載されたこの論文、掲載論文と、非常に似通っているということでございます。
どのくらい似通っているかと申しますと、ディスカッションペーパーの「要約」、この部分は次に出されますこの寄稿には載っていないんですけれども、あるいは部分的な経緯などということでカットをされているところがありますけれども、文章を語尾を変えて、ほとんど中身は同じく、文脈も同じく、こちらの方に掲載をされております。これはどういうふうになってこうなっているのでしょうか。
例えば、一例を申し上げますと、一番最初の文のところでございますけれども、「日本では、バブル崩壊以降、短期的で緊急避難的に伝統的な財政金融政策が発されてきた。」というのがこのディスカッションペーパーの一文でございますが、こちらの文では「日本では、バブル崩壊以降、短期的かつ」、「で」が「かつ」に変わっております、「緊急避難的に伝統的な財政金融政策が」、「累次にわたり」というような文言が入っております、「発されてきた。」というのが「発動されてきた。」というふうに変わっております。
この二つの原稿の関係について、まずお伺いしたいと思います。
■跡田直澄参考人(慶應義塾大学商学部教授)
お読みいただいたようで、どうもありがとうございます。
学者の世界としてディスカッションペーパーというものの位置づけをお話ししたらいいのかと思いますが、ディスカッションペーパーという制度は、これから正式にいろいろなところに投稿をしたり、それから週刊誌等も含めてですけれども、そういうところへ載せてもらう前の段階で、普通、昔からの用語で言えば、未定稿ないしはミメオというふうに書くような学問的業績でございます。
ですから、それが正式なジャーナル等に載ったときには、批評家といいますかコメンターという人たちから若干の修正をしろと言われたところは修正することがございますけれども、基本的には著者の意向に従って載せてくれる、そういう手続でやっていく中の第一段階のものをディスカッションペーパーと呼んでおります。
ですから、内容的にも、また文章的にもかなり近いものが出てくるというのは、我々の業界としてはごく普通のことでございます。
以上でございます。
■西村(智)委員
ありがとうございます。
ほかの部分にも語尾を変えたり言い回しを変えたりしているところがたくさんあるということでございます。
それでは、このディスカッションペーパーの中に、最後の方に「おわりに」ということで、こういうまとめがございました。「つまり、政府があまりにも極端な政策発動をし続けると、公的部門が無尽蔵にリスクを吸収できるとの錯覚を国民に抱かせてしまい、その結果、自ら進んでリスクを取ろうとする気概をも喪失させてしまうかもしれない。」というふうに記載されておりますけれども、私は、一点申し上げたいのは、「政府があまりにも極端な政策発動」というのは一体何なんだろうかというふうな疑問を持ちましたのと、それから、そういう政策発動をし続けてきたのはまさに政府・与党ではなかったのかということでございます。
そして、ここから質問でございますけれども、これはつまり、国民がリスクをとらなければならないということを意味しているものなのでしょうか。この間、竹中大臣は一度も答弁の中で国民がリスクをとる必要があるなどというふうには答弁していないと私は記憶しておりますけれども、これは、国民が本当はリスクをとって、今までローリスクの郵貯、簡保であったけれども、これからはハイリスク・ハイリターンでどうぞおやりくださいということを言っているのかどうか。
それから、跡田参考人、陳述の中で、分社化してリスクの遮断をするんだというふうなことをおっしゃっていられたかと思います。会社がリスクを回避して、利用者はリスクをとれということをおっしゃっているのでしょうか。参考人のおっしゃる正しい競争というのは、私は、本来であれば、最終ユーザーを守り、つまり国民を守って、失敗したときには経営者がその責任をとる、それが正しい競争のあり方だと思っておりますけれども、論理がずれてはいませんでしょうか。
■跡田参考人
まず、基本的な認識として、リスクというものはあらゆる場にあるということですね。リスクのないなんというものはあり得ないわけです。その幻想を今まで郵便貯金に関してはつくり上げてしまった。今、国債というものもリスクのある商品になりつつあるわけです。余りにも大量な国債を発行していますから、格付が下がればそういうことも起こり得るんですね。
ですから、リスクがないなんということはあり得ないので、みんなリスクをきっちりと認識してくださいということがその論文の最後のところで言いたかったことで、まあ、少し筆が滑っているところはございます。それは学者の言うことで、お考えいただきたいところもありますけれども。
分社化というものでリスクを遮断するということは、これは、それぞれの事業会社はリスクを発生させる可能性はあるわけです。そのときに、郵便事業会社がリスクを発生させたときに、そのリスクの穴埋めに郵便貯金の収益をくれというようなことが起こっていただいては困るわけなんです。そうすると、郵便貯金を預けていた人たちがもらうべき利子が支払えなくなる。これは金融機関にとっては決定的な問題になります。
民間の金融機関には絶対そういうことが起こらないように、リスクがほかから発生しないように遮断をして、そして民間の金融機関でリスクをプールする預金保険機構というものを政府も出資してつくるという形でやっております。ですから、リスクを遮断するというのは、ごく普通の当たり前の金融機関をつくっていきたいということ、そして、ほかの事業会社もそれぞれ自分でリスクを背負ってやっていってくださいと。
消費者と企業との間のリスクはどうですかという形では、お互いにリスクは分け合っていただかないといけない。預金保険機構は一千万までしか保証しないということになっていますから、預金者側もそれに応じて対応してくださいというのが今、金融改革でやっと整ったわけです。ですから、それと同じ立場で、イコールフッティングで郵便貯金会社や簡易保険会社もやっていってほしい、そんなような考え方を申し上げたと思っております。
消費者にだけリスクをとれなんということは決して申し上げた覚えはございませんので、重々お考えいただきたいと思います。
〔松岡委員長代理退席、委員長着席〕
■西村(智)委員
それでは、福田参考人にお伺いをしたいと思いますが、まずその前に、全国地方銀行協会の福田誠氏、本日の参考人でいらっしゃいますけれども、この方は、大蔵省を金融企画局長で退職されたいわゆる天下り官僚であります。業界の代表としてではなくて、まさに財務省や金融庁の代弁者としての御発言が先ほどの陳述でありました。政府の代弁者でしかない参考人を招致した与党の不見識を指摘しておきたいと思います。
その上でお伺いをいたしますけれども、福田参考人、郵政公社の民営化については我が国の将来の金融改革にとって重要だと。つまり、金融改革にとってこの郵政民営化は重要なんだ、そういうことを先ほど陳述でおっしゃいました。我が国の将来の金融改革にとってこの郵政民営化が重要であるというふうにおっしゃいました。ですが、これは、全国地方銀行協会といたしまして、果たしてそれだけのコメントで足りるのかというのが私の思いであります。
つまり、地銀協は、地域とともに発展する、これが大事な存在意義といいますか目的であるというふうに認識をしておりますけれども、地域コミュニティーにとってこの郵政公社の民営化がいかなる意味を持つのかということについての御発言はなかったのではないかというふうに思います。地域とともに発展するという地銀協のその使命から、この郵政公社の民営化をどういうふうに見ていらっしゃるのか、それを地銀協の副会長・専務理事としてきっちりお答えをいただきたいと思います。
■福田誠参考人(全国地方銀行協会副会長・専務理事)
御質問の趣旨を十分理解できているかどうか、ちょっと自信ございませんが、民営化をどのようにとらえているかということでございます。
冒頭申し上げましたように、地銀、地方銀行以下、地域金融機関というのは地元密着の営業をしておりまして、資金調達につきましても運用につきましても、地元を離れてはない金融機関でございます。その意味で、銀行ができてから、それぞれ営々と各地で地元のために展開をしてまいったわけでございますその結果、お客様との関係でいいますと、貯蓄手段の提供なり、それから決済手段の提供なり、いろいろな意味で、明治時代に郵便貯金ができたころに比べますと十分に地域の方々におこたえできているのではないかということでございます。
そういう意味で、余りにも肥大化した郵便貯金がこのままの形で存続されることは、冒頭申し上げたような意味で、金融市場をゆがめたり、さまざまな弊害があるのではないかということで、民営化に進むことについて是とするものでございます。
■西村(智)委員
この間、この委員会の質疑の中で、株の連続的保有というのが一つの大きな焦点になってまいりました。
四月二十五日の政府合意は、「株式の連続的保有が生じることを妨げない。」こういう文言だったわけでございますけれども、今回、与党から修正案が提出をされまして、持ち株会社が議決権行使ができるような形で株をずっと持ち続けることをねらいとして今回の修正が出されているわけでございますけれども、これは、地銀協がずっとこの間懸念されておられました暗黙の政府保証ということに当たらないというお考えでしょうか。つまり、この修正によって、よりイコールフッティングに近くなったと見るか、あるいは遠くなったと見るか、お答えください。
■福田参考人
連続的保有の規定についてのお尋ねでございますが、私どもは、再三申し上げていますように、政府出資が残っている状態は完全な民営化とは言えないのではないかというふうに申し上げております。
それはそうでございますが、今回の株式の連続保有がそれではどういう趣旨で設けられている制度なのか、どのように運営されるかということにつきましては、私どもからは、つまびらかでございませんので、この修正についてコメントすることは差し控えたいと思います。
■西村(智)委員
どうしてコメントできないのかなということが大変に不思議なところでございますけれども、ここは地銀協のお立場からはやはりきちんとコメントをしてしかるべきではないかと思いますが、これ以上聞いても恐らくお答えは出てこないと思いますので、次の質問に移りたいと思います。
実は、この郵政民営化で、民営化したらどうなるかということについて、骨格経営試算ですとか採算性に関する試算ですとか、いろいろ出されてきたわけでございますけれども、この採算性に関する試算ですね、これが非常にバラ色の話として出てきているわけでございます。
これでございますけれども、例えば、コンビニで利益率が九%、あるいは保険の第三分野の新商品で二百三十万件、国内で活動している企業の一位と二位を足してもようやくその数字に達するかどうかというような、そういう新規の契約件数が確保できるんだというようなことになっております。
跡田参考人、竹中平蔵経済研究所の理事でいらっしゃるかと思いますけれども、この採算性に関する試算についてはトリガー・ラボの方でごらんになりましたか。
■跡田参考人
正確にはその研究所はトリガー・ラボという名前で登記されておりまして、そういう意図は若干持っておりますけれども、そういう研究所ではございません。
それから、トリガー・ラボというのは、私どもが応援団としてつくっているものでございまして、そういうところで、基本的な政策立案というのですか、そういうものにかかわるものを大臣等ないしはその関係者とお話しするということは基本的にはあり得ません。私どもは単なる一つの研究所として、ポリシースクールというようなこととか、若手の公務員の人たちを少し元気づけようというようなことでやっているものでございまして、そういう採算性に関する試算というのは、基本的に、諮問会議等に出ていくという段階で、私も一応諮問会議の議員の先生方と少し交流がありますので、そういうときに意見を聞かれることはあるかもしれませんけれども、事これに関しては、全く私は見ておりません。
■西村(智)委員
最後に、石井参考人にお伺いをしたいと思います。
この郵政民営化関連法案の中で、先ほども一川委員が質問されておられましたとおり、私は、やはり決定的に欠けている議論があると。つまり、この日本という国の社会をどういうふうにデザインしていくかという、いわば公共部門と民間部門との役割の分担、あるいはそれらのこれからの方向性、これらについて全く議論が抜けていたというふうに思うんです。
民営化法案はその中の一部であろうと思うんです。役割を分担する、こういう方向でいくという中のほんの一部であろうと思うんですけれども、これから全体的な議論をどういうふうに進めていくべきなのか、そして、この郵政民営化についてはその中でどういう位置づけとして置いて議論していけばいいのか、そこを最後にお聞かせください。
■石井参考人
お答えします。
今の先生の御指摘は、もう本当にそのとおりだと思います。
日本の形がやはり今こそ問われているときはないと思います。その中で、具体的に国会や政府の方から国の形を示すという、構造改革とかいろいろありますけれども、全体像を示すというのがシナリオが出てこないというふうに思います。そこで部分的なところだけを議論しても今はもうだめだというふうに思っております。
ですから、もっと日本のあるべき姿、特に、超高齢化社会を迎えるこれからの日本の形をどういうふうにつくっていくのかというのは、そのためにこの郵政民営化の議論というのは大きな大きな重要な課題なんですね。ですから、もっともっと慎重に審議をして、そして国民が理解できるような形を示すということが一番大事だと思います。
以上でございます。
■西村(智)委員
時間ですので、終わります。ありがとうございました。