■西村(智)委員
民主党の西村智奈美でございます。
NHK予算に関連して、幾つかの質問をさせていただきたいと思います。
先ほど来ずっと、デジタル化に関連する質疑がございました。二〇一一年にデジタル放送に全国が飛び込む、まさに多機能そして高画質の放送がいよいよ現実のものになるということで、本当の意味でのICT社会がいよいよこの日本にも到来するのかということで期待をしておるわけでございます。
しかし、国民の皆さんの意識、認識というものは、デジタル放送といったものはどんなものなのか、そしてそれが自分の生活にどういう影響を与えるのか、どんなふうに暮らしが変わるのか、この具体的な像はまだまだ描けていない、こういうふうに思うんです。
今、デジタル化に向けてさまざまな場面でPRが行われております。NHKのスポットなどでも行われておりますし、あるいは販売店などでもポスターなどを目にするわけでございますけれども、ややもするとこれは事業者やメーカーの方が、あるいは販売店の方が主導しているものだと受け取られかねないのではないか。
このデジタル化というものはまさに国の国策であるというようなお話がございました。どうも総務省の積極的なPRの姿勢というものが見えないわけでございますけれども、この点に関連してどういうふうに認識しておられるのか。そしてまた、今後さらに総務省の方で、具体的な将来像、テレビはどうなるのか、あるいは周辺機器が必要なのかどうかということを含めましても、周知広報が必要だというふうに思いますけれども、大臣の御見解を伺います。
■麻生太郎総務大臣
先ほど、田嶋さんの質問にも同様の趣旨の御質問があったと記憶をします。基本的には、今言われましたように、この問題は、デジタルというこれまでの放送というより通信に近いような、双方向で話ができるというメリットというのは非常に大きい。また、非常にきれいに見えるというのも二つ目として大きいと思っておりますけれども、そういったメリットの話ばかりが出てきて、二〇一一年になったら今あるアナログは使えなくなるという点に関しては、メーカーのペースに乗っておりはせぬかというのが田嶋先生の言い分、多分、先生の言い分もほぼ同じなんだと思います。
今言われた点は、メーカー側の立場に立てば、新しい機械を売りたい、チューナーよりはそっちの方がもうかると思いますから、そっちの方に行くのはわからぬではありませんけれども、利用者、使用者、消費者の立場に立ちますと、今御指摘の点というのは基本的には正しいと思います。
この問題については、二〇一一年になりますと、今あるアナログ放送は少なくとも中止になって、そして、デジタルになります分につきましては今のテレビはチューナーをつけなければだめなんですという点が少し広報が抜けておるのではないかという御指摘なんだと存じます。
私どもといたしましては、一応、過日、調査をすると、二〇〇三年東名阪で開始は、全国で七六・五%の認知度、三大都市圏においても八〇%ということになっておりますし、また、二〇一一年アナログ放送の終了ということを知っておるというのは、三大都市圏では五八%、全国では五一・九%ということになって、前回やりました調査は三三%にしかなっておりませんので、それに比べたら認知度は少なくとも二〇%近くは上がっておるということだと思います。
今後とも、その点の周知徹底、広報ということには努めていきたいと存じます。
■西村(智)委員
それで、デジタル化と申しますと、さまざまな利用形態が可能になるということでございますけれども、今回発表になりましたNHKビジョン、こちらの方を拝見しておりまして、いわゆる携帯端末、放送のデジタル化に伴って携帯の端末で動画が受信可能になる。文章を読んでおりましたら、もうきょうあすにでも開発が可能だ、実現可能だというように受けとらせていただいたんですけれども、この費用のあり方について、多少両にらみの記述がございました。
まずお伺いをしたいのは、デジタル化に伴って携帯端末での動画受信などが可能になるということなんですけれども、それが実現した場合に、そのサービスの具体的なイメージをお伺いしたいと思います。
続きまして伺いたいのは、その経費負担のあり方なんですけれども、このビジョンの方に実は両方書いてあるんです。一つには、携帯端末などは、それを持っている方々、いわゆる特定の方々しか利用ができないものなので、その受益者たる使用者が経費を負担すべきであるという考え方。もう一つは、とはいいながら、これはやはりNHKがこれまで原則としてきた受信料によって運営をしていくのがよろしいんであるという考え方。二つ出ておったんですけれども、このあたりについての検討状況、今後どういうふうにこの議論を発展させていくのか、お伺いをいたします。
〔委員長退席、野田(聖)委員長代理着席〕
■海老沢勝二参考人(日本放送協会会長)
お答えいたします。
デジタル技術の利用範囲は、いろいろな面で広がってきております。特に、インターネットとの親和性がよくなる、そのために、我々の放送がインターネットといろいろな形で連携ができる。そのために、デジタル放送の単位、十三セグメントという単位がありますけれども、その一セグメントの中で携帯電話に向けての新しい放送ができる。それをニュースチャンネルにするのか、また、緊急報道体制に向けてのそういうものにするのか、いろいろな方法があると思います。私どもも、そういう新しい携帯端末に向けての内容をどういうふうにしたら一番視聴者のためになるか、今一生懸命検討しているところであります。
それをNHKの受信料でやった方がいいのか、また、その普及の状況によりますけれども、特定の人だけしか見ないような状況では、それを利用する者に負担してもらうとか、いろいろな考えがありますので、その辺をこれからさらに勉強していきたいと思っております。
そのほか、サーバー型の放送も今開発が進められておりますし、あと一年半から二年、三年の間にはこれが実用化できるというふうに我々も伺っております。そういうサーバー型放送についても、いろいろNHKも具体的なシミュレーションといいますか、やり方を考えておりますが、その辺をもう少しこれから関係方面とも協議しながら、どういう方法が最もいいか、検討をこれからさらに進めていきたいと思っております。
■西村(智)委員
どちらの方に集約をされるのか、まだ現段階では未定ということだと思いますけれども、NHKの持っている公共性、こういったものをしっかりと原則として、それにかなう方針をぜひとも出していただきたいものだというふうに希望を申し上げておきます。
引き続きまして、時間が短くなりましたので、少しはしょらせていただきます。
イラクについての報道、先ほど寺田委員の方からも御質問がありましたけれども、やはりこの問題については視聴者の関心が極めて高い。先ほど、テレビの視聴時間が伸びていることには、例えばイラクなどの重大な事件が起こってきていることが背景にあるのではないかというような御趣旨の発言があったかというふうに思いますけれども、やはり、私たち国民が事実を知るために、客観的な報道あるいは多角的な報道というものは確保していただきたいというふうに強く要望をしているところでございます。
ただ、これについては、例えば、防衛庁の方から取材を自粛してくださいという要請がありましたり、あるいは逆に、報道サイドの方から取材についてのルールをきっちりと確立しましょうというような申し入れを行ったりしてきた経過を経て、ことしの三月、新聞協会とそして民放連との間で申し合わせ事項が確認をされた。それに引き続いて、防衛庁を加えた三者の間でさまざまな具体的な事柄についての確認事項が取り決めをされたということなんでございます。
その三者の確認事項の前提となっております新聞協会と民放連との間の申し合わせ、そこにこのような項目がございました。「表現、報道の自由の尊重」「憲法の認める表現の自由に属する報道の自由、報道のための取材の自由について、政府は最大限尊重する。」これが二番目です。四点目には、「自衛隊部隊の円滑な任務遂行」「現地の自衛隊部隊の円滑な任務遂行に支障を与えないよう留意する。」こういうふうに含まれている、二つの項目がある。
こういう協定が存在している中で、NHKとしていかに独自の取材を行っていくのか、報道の客観性あるいは公平性を確保していくための取り組みというのはどのように行われるのか、そこを伺いたいと思っています。
また、特に四点目の項目なんですけれども、「現地の自衛隊部隊の円滑な任務遂行に支障を与えないよう留意する。」というような項目が含まれている中で、この協定によって、例えば報道の公平性、客観性、これがゆがめられるおそれがないのかどうか懸念をいたしておりますけれども、そのあたりについてのNHKのお考えを伺います。
■関根昭義参考人(日本放送協会専務理事)
先ほど申し上げましたけれども、これはあくまでも、有事というんですか、かなり限定された中での取材ルールを決めたものであります。
もとより、我々取材する側の安全性の確保、そして復興支援活動に当たる自衛隊員等に対する配慮、そういったものの中での、極めて限定された中でのルールでありまして、そういう中でも、例えば自衛隊の支援活動について政府には説明責任があるとか、また、政府は報道の自由を最大限尊重する、そういったことも明確に打ち出しているわけですから、それは現地での運用というんですか、そういった中である程度解決していく以外にないんじゃないかという受けとめ方を私どもはしています。
先ほど申し上げましたけれども、今そういう中でも、復興支援活動に当たっているサマワでの取材等で大きな支障が生じているとか取材に制約を受けているというところは、まだ私どもには届いていません。
また一方で、イラク情勢ということに目を通しますと、私どもは、海外のいろいろな放送機関、四十七の国と地域、七十三の放送機関と取材協定を結んでいますので、そういった海外のニュースなんかも織り込みながら、イラク情勢等については、公平性、客観性の確保に当たっていきたいというふうに考えています。
■西村(智)委員
最後に、今国会で議論を予定されておりますいわゆる国民保護法案について、若干NHKのお考えを伺いたいと思っています。
日本が武力攻撃を受けたり大規模なテロが発生した場合に、住民の避難それから被災者の救援活動について盛り込んだこの国民保護法案なわけでございますけれども、この中で、NHKがいわゆる指定公共団体として位置づけられることになります。
NHKを含め各社が独自の判断に沿って報道するということを私たち国民は期待をしておるわけでございますけれども、いわゆる有事の際に、NHKがこの指定公共団体に指定をされることによって、NHKが独自の判断で国民に必要な情報を提供することができるのかどうか、そのことにこの法案によって支障が生じないのかどうか。これは法案が成立するという仮定の話でございますけれども、現時点でのNHKの認識を伺いたいと思っています。
また、万が一有事が起こった場合に取材の制限も予想されるわけでございますけれども、公平公正な報道をどのように確保していくおつもりか、伺います。
■海老沢参考人
今、法案が提出されて、国会でこれから論議されようとしております。
今、自然災害等につきましては、災害対策基本法の中で私どもNHKも指定公共機関として指定されております。今度の法案でも多分NHKは指定公共機関として指定されるものと私ども思っております。
私どもは、そういう指定公共機関になろうがなるまいが、やはり国民の生命財産を放送を通じて守っていくのが我々の最大の使命でありますので、どういう事態になっても、我々は常に視聴者・国民の立場に立って、適正な、的確な報道をするのが我々の役目であります。
今度の法案の中でも、国なりあるいは都道府県から警報または避難の指示及び緊急の通報、この三つが義務づけられておると思います。そういう中で、それを我々はきちっと報道しながら、またいろいろな周辺の取材をしながら、できるだけ迅速に、わかりやすく、公平に伝えていく、この方針にはいささかも変わりありません。
そういう法律ができても我々の取材が制限されるようなことはないと私は思っておりますし、我々もまた報道の自由、言論の自由を守るという大きな使命を持っておるわけでありますから、いずれにしても、視聴者・国民がやはり安全で生命が確保されるような、そういう報道にいつの時代でも心がけていくのが我々の使命であろうと思っております。
有事もいろいろな有事がありますので、そういう判断はなかなか難しいわけでありますが、いずれにしても、基本的には我々、報道機関としてきちっとした対応をしていきたいと思っております。
■麻生大臣
今の点で補足しますけれども、西村先生、非常時ですから、少なくともその日の自衛隊の行動、携行する武器、人数等々があらかじめテロリストに抜けるということは、待ち伏せ等々の被害を招くということは断固避けねばならぬのは当然のことだと思いますので、ある程度制限されるのはやむを得ぬところだと思います。
■西村(智)委員
時間ですので終わります。ありがとうございました。